子どもガイドライン

 
『化学物質の子どもガイドライン 食事編』について。
http://www2.kankyo.metro.tokyo.jp/chem/kids/
 
東京都が作成し、7月に発表されたものです。
内容的には細かい数値以外はフツーに新聞を読んでいれば知っているはず程度のもので、
とくに目新しさはありませんデス。
『食卓は語る』を読んだあとでは、それでもアヤしいのかなと思ったりですけれど…
乳幼児は、これにもあるように同じものを摂取したとしても大人に比べて体重1kgあたりでは2倍になるうえに
解毒機能も未熟ですから、化学物質曝露についてはより慎重な対応、厳しい規制が望ましいのは
間違いないことでしょう。
 
これまでに殺虫剤樹木散布編・鉛ガイドライン(塗料編)・室内空気編が作成されています。

我々は世界中の子どもが環境中の有害物の著しい脅威に直面していることを認識している。(中略)
有害物に関する情報が十分でないときは、我々は予防的な原理又は予防的アプローチに則り、子どもの健康を護ることに同意する。

とする子どもの環境保健に関する8カ国の環境リーダーの宣言書(1997年マイアミ宣言)にそって、
生活のなかにあふれる化学物質についてリスク分析するという趣旨のようです。
 
で、その趣旨と、東京都の調査結果に対する東京都内分泌かく乱化学物質専門家会議のコメントの1つ

使用済みのポリカーボネート製ほ乳びんの調査では、すべてのほ乳びんから微量であるが、ビスフェノールA の溶出が見られた。さらに、ほ乳びん洗浄・保管方法などの取扱方法によっては、今回の検査結果を上回る溶出量となる可能性も示唆された。
ビスフェノールA の乳児に与える影響が明確になっていない現段階では、使用禁止等の措置を講ずる状況ではないとしても、乳児のビスフェノールA の摂取量をできる限り低減するべきであると考える。そのためには、実際の使用実態を考慮した使用上の留意事項を、各ほ乳びんメーカーが具体的に示すことが望まれる。

では、なんだか矛盾を感じてしまうのです…
 

現在、化学物質について考えるとき、それが豊かな暮らしを支えているという利便性と、健康に対する悪影響というリスクの両面を認識することが必要になってきています。リスクがゼロの状態が目指すべき理想であることに、誰も異論はありません。しかしゼロリスク実現のためには、コストは無限大となり、そのことによる別のリスクが生じてくるというのが一般的な考え方です。
一方、リスクに目を向けたとき、我々が何もしないという選択は許されません。現状においても、より少ないリスクを目指すことは可能であり、特に、化学物質への感受性が高いと考えられている子供への影響を前提とするとき、できるだけ化学物質の低減化を図ることが望まれます。

大人より化学物質に弱い子どもを護るための自治体のこのような取り組みは、全国で初めてのことです。
欧米に比べ化学物質に対する規制が緩いといわれていますから、このようなアプローチはたいせつでしょう。
たとえばアメリカでは食品品質保護法(Food Quality Protection Act)においては食品中の農薬について

乳幼児に対する有害性について完全で信頼できるデータがない場合には一律で基準値を10倍厳しくすること

としているそうです。
ただ、これが実際にどれくらいのリスクを指し示しているものなのか専門知識のない私には正直わからない。
ですから

効果的なリスクコミュニケーションのためには、関係するすべての人たちが最新の知識・情報を共有化することが必要です。

といわれても困ってしまいます。このガイドラインに“お知らせ”以上に意味があるのかなって。
 
情報は広く開示されるべき、もちろんそうです。
だけど、それをどう活かせるかリスクコミュニケーションなんてできるのかどうか…
一方的に情報を出せばコミュニケーション、ではないはずです。
でも、提示される情報を検証したり活かす方法が私にはありません。
なにか起こったとき「行政は情報を提供した、それを自身で判断した結果ではないか」
て言われちゃったらどうしようと心配になってしまいます。
被害妄想ちっくかもですけど。
 
 
5年くらい前まで、
厚労省のトピックスとか学会のガイドラインにアクセスできるなんて私には考えられないことでした。
知ることができないこと、こわくて、情報がほしいと思いました。
アクセスできるようにはなっても、なにが必要なのか必要でないのかを選択するのはやっぱりむずかしいままです。
 
 

殺虫剤やプラスチックの難燃剤など、身の回りで幅広く使われている有機リン化合物
有機リンは分子構造上、酵素の鍵穴に入り込みふさいだままになりやすく、その結果、脳内の神経伝達物質などが代謝されずに蓄積し、さまざまな神経障害を引き起こす。

北里研究所病院センター長 石川氏のインタビューより(2004.1.19)
最近の殺虫剤は人間がけいれんを起こすような急性の毒性は弱められている。仮に急性中毒になっても有機リンは体内で分解、排出されるから早く回復すると信じられていた。しかし実際は、あとで多様な精神・神経障害が表れ、微量でも繰り返し吸い込めば徐々に症状が出てくる。
とくに子どもは精神・神経機能の発育に影響が出る可能性があり、注意しなければならない。