治療拒否

 

【治療拒否】患者自身が治療を拒んだ場合は自己決定権として尊重すべきだとの考えが広がる一方、子供の治療を拒む親への対応が大きな問題となっている。子供の治療には親権者の同意が必要だが、治療を拒む親の意向に従うと子供の「治療を受ける権利」を侵害する恐れもあり、児童虐待の一種である「医療ネグレクト」ととらえるべきだとの見方もある。ただ、病状が重く死が迫っている場合など治療が必ずしも子供の利益にならないことも想定され、どのようなケースが虐待になるのか明確な定義はない。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041220-00000021-san-soci

わが子の治療 拒む親(東京新聞 2005.12.20)
 
病気の子どもに必要な治療を医師が提案しても、親が拒んで受けさせない「治療拒否」を経験した小児系の病院が、昨年一年間だけで18%に上ることが十九日、厚生労働省研究班の調査で分かった。完治が見込めず「育てる自信がない」など、子どもや家族の将来を悲観したものが最多。拒否後に死亡した子どもの割合は、医師がもともと救命困難と予測したケースの約二・八倍に達していた。 

親の承諾なしに病院が治療に踏み切るのは困難とされ、国内の小児医療現場の深刻な実態が浮かんだ。米国では医師の申し立てで治療の是非を裁判所が審理、治療命令を出すなどの仕組みがあり、子どもの「治療を受ける権利」を守る早期の対応を迫られそうだ。

調査は二−三月、小児科(新生児科を含む)がある全国の五百六十六病院を対象に実施。二〇〇三年中に拒否の有無や内容を尋ね、三百二十八病院が回答した。「拒否事例があった」としたのは六十病院。病名は染色体異常に伴う内臓奇形や、水頭症などの神経疾患、心臓病、脳障害、白血病などで、ゼロ歳児が58%を占めた。拒否の理由は、完治が望めず「子どもや家族の将来を案じた」が40%と最多。民間療法など非医学的な代替治療を望んだケースが22%で続いた。

夫婦の不和や望まない妊娠などを背景に親が子どもに愛情を示さず治療を拒み、病院が「児童虐待に当たる」と判断したケースが10%あったが、児童相談所に連絡した病院は半数にとどまった。ただ、専門家の間では「愛情があっても、医療水準に照らし合理性がない拒否は虐待ととらえるべきだ」との意見が強い。

医師の説得で途中で治療を受け入れた親もいた半面、酸素や栄養の補給など最低限の対応しかできなかったり、通院が途絶え連絡が取れなくなったりしたケースが計48%を占めた。治療を尽くしても救命困難と予測されたケースは12%だったが、治療拒否後には33%で子どもが死亡していた。