障害者自立支援法案

 

「今後の障害保健福祉施策について(改革のグランドデザイン案)」に関する意見書
 
求められているのは、「利益」なのではなく、生きるうえで最低限必要な身体動作、移動、コミュニケーション等に関する基本的な自由の保障なのである。

グランドデザインへの評価と課題(きょうされん)
 
(審議・政策検討の進め方について)第二は、結論を出すのが余りに性急過ぎるということである。新たな法律の制定や関連法律の改正など、結論は出ていないというかもしれないが、しかし実際には昨秋のグランドデザインの発表をもって基本的な枠組みは定められたといってよかろう。新たな障害保健福祉施策のあり方をテーマとした正規の審議会が開始されたのは昨年3月のことで、半年余りでグランドデザインという名で大きな方向付けがなされたのである。この検討の流れについていけた者がどれくらいいただろう。障害者団体の中心メンバーなど、ごく一部の人に限られていたのではなかろうか。しかも、厚労省側が示した単一な方向性のみで、検討が進められていったのである。いわゆる「ワン・モデル・シュミレーション」方式。この点では、重大政策の決定時に複数案を示すことの多い欧米とは随分とプロセスが異なるのである。いずれにしても、当事者や地方自治体の意見の尊重や複数案を吟味できるだけの時間の確保など、もっと必要な時間をかけるべきである。
第三は、障害を有する当事者の意見や要望の反映が余りに不十分であるということである。たしかに、審議会には障害者団体の代表が参加し、今回は審議会とは別に関係8団体の代表とも意見交換が図られた。また、団体個々に対して、説明の機会や懇談がもたれたようである。それでも、ごく一部の当事者でしかなく、とくに地方の当事者との接触は全くといっていいほどなされていないのである。むろん、一定のテンポでの検討であり、当事者の意向をどこまで汲み取るか、難しい問題である。今回に限った話ではないが、今後の課題として、意見集約の技術的な検討を含め、とくに地方在住者の要望や意見を聴取する仕組みをつくるべきである。

 
今後の障害保健施策について(改革のグランドデザイン案)厚労省
「国際生活機能分類−国際障害分類改訂版−」(日本語版)の厚生労働省ホームページ掲載について
 

精神障害者団体:公費負担削減反対の署名21万分提出毎日新聞 2005.3.12)
 
精神障害者の外来通院治療について、厚生労働省が自己負担割合を現行の一律5%から、所得に応じて1〜3割に引き上げる方針を示している問題で、精神障害者団体が11日、公費負担削減に反対する21万3156人分の署名を厚労省に提出した。引き上げは今国会で審議予定の「障害者自立支援法案」に盛り込まれている。
精神障害者団体のメンバーは署名を提出後に会見。多くの精神障害者は少ない年金で何とか生活をしている上、他の障害に比べ、福祉サービスの拠点が少なく、所得保障も不十分と指摘。このような状況で、負担だけを増やすのは生活破壊につながるなどと訴えた。【玉木達也】

 
朝日新聞(2005.4.19)より

まず「益」という表現に違和感があります。
トイレに行く、食事をする、風呂に入る、日常のことをするにも支援が必要な障害者がいます。そのサービスを「益だから利用料を払え」と言われているのです。障害をもって生きる人の最低限のニーズを満たすための援助が益と呼べるでしょうか。ぜいたくがしたいのではない。人間らしく生きる最低限の支援が欲しいだけです。
 
支援費が急増したのは、必要なのに我慢していた人が使うようになったから。厚労省はサービス量が青天井で増えると不安に思っているようですが、1日は24時間しかない。障害者への支援は、食事や入浴の介助を考えればわかるように、たくさんあるほどうれしい、というものではないので、おのずと適正な水準に落ち着くはずです。
 
介護保険では高齢者も1割負担をしている、との意見について)障害者だけが特別扱いでいいとは思わない。ただ、高齢者は働いていたときの蓄えや家族に貢献してきた歴史を持つ人が多い。しかし、障害者が例えば作業所で働いてもきわめて収入は少なく、配偶者や子どものいない人も多い。状況がより厳しいと言えます。
 
障害者の年金は、サラリーマンの平均年収よりはるかに少ない。今でも苦しいのに利用料をとられたら、地域で自立した生活ができず、親元や施設に戻るしかない。それでは何のための改革なのか。週に優雅不十分なまま、負担だけ公平というのでは、サービスの抑制を狙ったとしか考えられない。どうしても導入するなら、障害者が働ける環境づくりや、障害年金の引き上げなど所得保障をすべきです。
 
障害者は国内に少なくとも600万人。20人に1人は障害があることになります。20年余り前、国連は国際障害者年行動計画に「一部の構成員を排除する社会は貧しく、もろい」と明記しました。日本は「貧しい」。弱い者に必要な支援をしない現状は、バラバラになっていく社会の始まりです。
 
福島智さん)