心神喪失者医療観察法

 

http://d.hatena.ne.jp/taihenda/20050620/p1
 
http://knakayam.exblog.jp/2083831/
医療観察法心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律)の施行日は7月15日ですが,今月8日に行われた衆議院法務委員会での質疑によると,いまだに,指定医療機関が,7分の1程度しか決まっていない上,具体的な解決策についても,「関係者の意見を聞いたうえで英知を集めて対応を検討する」としか答弁できていないようです・・・。
 検察官は,医療機関については,「しかるべく」などと記載して,申立てを行うしかないでしょう(検察官は申立てをしないと違法になる)。裁判所は,申立てがなされても,指定医療機関が決まっていませんから,結局,鑑定入院命令などを発令できない状況になりかねません。
 
医療観察法
http://www.moj.go.jp/KEIJI/keiji22.html

 

精神障害者犯罪>心神喪失医療観察法、7月15日施行へ(毎日新聞 2005.6.30)
 
重大犯罪を起こしながら心神喪失などを理由に刑事責任が問えなかった精神障害者に対し、裁判所が入・通院を命じる「心神喪失医療観察法」について、政府は今月15日に施行することを決めた。1日の閣議で正式決定する。しかし、入院を受け入れる専門病棟の建設が地元住民の反発で大幅に遅れており、施行後に病床が不足することは必至。対象者の受け入れ体制など制度の大幅な見直しを迫られるのは確実だ。

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心神喪失者等医療観察法と障害者自立支援法案(長野英子)

32条自体「精神障害者」とラベリングされ差別されることを恐れ、利用率は低い。
厚生労働省の推計では外来通院精神障害者は210万人以上いるが、2003年度では約76万人しか32条を使っていない。精神障害者都道府県で医療費公費負担をしているところは例外的なことも考慮すれば、更正医療・育成医療よりはるかに低い利用率といえよう。したがってこれを利用している層は差別があっても背に腹はかえられない、使わなければ医療を受けられない層といっていいだろう。医療を受けられず、再発入院、自殺、という事態が生じるのは目に見えており、自殺予防・退院促進に逆行する結果を招く。東京都では生活保護受給者を除く32条利用者のうち6割が本人住民税課税である(200年度推計)。したがって東京都では少なくとも6割が「自立支援医療」の対象外とされる。

厚生労働省は、精神疾患は誰でもかかる病気であり、精神障害者だけ特別扱いはできないから当然3割負担、しかし低収入の層に配慮して「自立支援医療」の対象とするといっているそうだ。しかし不思議なことに、精神障害者だけは「自立支援医療」を入院医療には使えない。厚生労働省精神保健福祉課に電話で質問したところ「入院については措置入院で手当している」とのことである。

私たちが人として当たり前に地域で暮らすために、求める医療は外来だけではない、時には入院治療が必要なことはあるし、自由意志で入院する必要は当然生まれる。まして国は現行の精神障害者ショートステイすら1人暮らしでは認めない要綱(自立支援法でも同様)を出しているし、ショートステイ自体が非常に不足している実態がある。
またショートステイでも病状不安定のときは入院しなさいと断られる。

やはり精神障害者は特別扱いされている。措置入院すなわち治安対象としての入院以外は公費負担しないというのが、「自立支援医療」を精神障害者が入院で使えないという理由であろう。

 
 
 
中山研一の刑法学ブログより

http://knakayam.exblog.jp/1028882/
この新しい要件が「再犯のおそれ」とどういう関係にあるかについては、多くの論議がなされ、いまでも続いており、精神科医の間でも「リスクマネジメント」をめぐる論争が続いていますが、はっきりしていることは、国会で修正案が通過した際に、政府提案者側が「再犯のおそれ」は要件から削除したことを一致して述べていたという事実であります。
したがって、「再犯のおそれ」から「医療の必要性」への転換、保安法から医療による社会復帰法への転換がなされたと解されなければならないと、私は基本的に考えています。

http://knakayam.exblog.jp/1122933/
法律の性格をめぐる本質的な議論は今後も必要ですが、折角修正案が「再犯のおそれ」を要件から削除して、「医療の必要性」と社会復帰を強調したことを踏まえて、それを今後の運用の中にどう生かすべきかを考える必要があるように思います。
そして、その観点からすれば、厚労省の文書にある「鑑定ガイドライン」の中身を批判的に検討し、鑑定入院中の医療の保障、さらには不服申立ての手続などを、付添人の活動とその役割の問題として正面から取り組もうとしている日弁連の対応と努力に注目すべきだと思います。

http://knakayam.exblog.jp/1129972/
たしかに、刑事手続か医療処分かという区別に際して、限界部分を本法の方に取り込むということになればその可能性が出でくるでしょうが、国会審議でも、精神病質者は対象にしないという答弁があり、また実際にも、1年半という比較的短期間で回転するという構想が出されていますので、それを信用するとすれば、医療の必要性を基準とした治療効果を目標とした運用が目指されているように思えるのです。
もっとも、現実はきびしく、社会復帰を唱えても受け皿の不足から退院が困難になるおそれは十分にあり、理想通りには行かないと思われます。

http://knakayam.exblog.jp/1745377/
しかも、施設面の不備だけでなく、この法律には、適用の手続上も、裁判所による入院等の決定の基礎となるべき「鑑定入院」(2か月プラス1か月)中の医療および処遇に関する規定がないために、その間の身柄拘束の根拠は何かという疑問が生じている。これはやや難しい問題であるが、鑑定が終わった後の医療と観察を誰が誰の責任で行い得るのか、同意がなくても行い得るのか、不服の申立ては誰に対して行えるのかといった重大な問題が存在する。したがって、この問題を論議し、必要な規定を補充するまでは、施行を延期するのが、立法者の当然の義務というべきであろう。

http://knakayam.exblog.jp/1780747/
第3は、むしろ主題が民間病院の団体である「日精協」として精神障害者に対する社会復帰政策の充実を政府に求めるという趣旨のもとに、いわゆる社会的入院の解消(10年間に7万2千人)をかかげた厚労省案が病床の削減に連動するおそれのる机上の空論であるとして、その官僚主義的な政策を批判するという点に力点がおかれていることである。

http://knakayam.exblog.jp/1931374/
心神喪失医療観察法は2003年7月に成立したが、2年後の2005年7月の施行をめぐって、施設等の準備状況の遅れが問題になっている。このまま施行されてしまえば、適正手続の下における「手厚い医療」という本法の大義名分が失われてしまうおそれがある。
ところで、本法が「金まみれの法案」であるといわれた歴史的事実がすでに忘れられようとしているので、ここで「日精協」(日本精神科病院協会)の政治連盟が本法の立案過程にあたる時期(1999-2001年)に行ったとされる政治献金の内容を再確認しておきたい。

http://knakayam.exblog.jp/1959116/
心神喪失者等医療観察法は、2005年7月15日までに施行されることになっているが、肝心の指定入院医療機関の建設が進まず、現時点で確保できそうなのは3カ所しかなく、報道では、自治体病院を「代用病院」にしようとする動きまで出てきている。
このまま施行してしまえば、遅れは施行後に補うといってもその保障がなく、法が掲げている「高度で手厚い医療」の実施が危うくなり、禍根を残すおそれが大きい。

 
http://d.hatena.ne.jp/arcturus/20050327

心神喪失者等医療観察法鑑定ガイドライン 策定に対する意見書日弁連



 
7月25日追記

医療観察法施行 指針なお未完成「再犯の恐れ」長期拘禁の懸念(2005.7.19 読売新聞)
 
新制度では、裁判官と医師が2人一組で審判を行い、別の医師の鑑定意見書を基に入院期間などを判断する。その際の指針が、厚生労働省の研究班が作成した「鑑定ガイドライン」だが、施行された今も、完成版はできていない。
すでに示されている試案では、「再犯防止のため、長期的なリスクアセスメント(危険性の事前評価)を重視する」として、過去の捜査記録や生活歴を判断材料に挙げている。しかし、同委員会の富田三樹生委員長(多摩あおば病院長)は「誤って再犯の恐れがあると判断され、長期入院となるケースが必ず出る」と危惧する。日本弁護士連合会も、同様の意見書を厚労省に提出した。「社会復帰のための医療」を掲げる新制度が、「治安のための長期拘禁」につながるのではないかという根強い疑念が、こうした反発につながっている。

警備は厳重、治療も配慮 医療観察法入院病棟を公開共同通信 2005.7.25)
 
心神喪失医療観察法に基づき、重大事件を起こしながら心神喪失などを理由に刑罰を科されなかった精神障害者が入院する国立精神・神経センター武蔵病院(東京都小平市)の施設が25日、報道陣に公開された。病院関係者は「警備は厳重だが刑務所ではないので、治療効果を上げるためにも快適に過ごせるよう設備に力を入れた」と説明した。
入院施設は全国に24カ所程度必要だが各地で住民の反発が強く、武蔵病院の入院病棟は唯一完成した施設。
公開された病棟は住民の不安に配慮し、敷地を高さ3・6メートルと2メートルの二重フェンスで覆い、フェンス間に赤外線センサーを通したほか、入り口を二重扉にし、警備員を24時間常駐させた。病棟は鉄筋平屋建てで、床面積は2400平方メートル。30室の病室が十字型に並び、中央部を室内広場にした。

「保安法から医療による社会復帰法への転換がなされた」と、この記事のニュアンスのズレは、なんだろう…