障害者自立支援法案

 

自立支援法:障害者らが集会 定率負担導入反対など訴え毎日新聞 2005.6.24)
 
国会で審議中の障害者自立支援法案を考える障害者らの集会が5日、東京都千代田区で開かれた。障害者と家族、支援者ら約1万1000人(主催者発表)が参加。所得保障が確立されないまま原則1割の定率負担を導入する法案は、障害者の生命を削ることになるなどと訴えた。
集会では、定率負担導入反対に加え「現在の生活水準を絶対に後退させない」「難病や発達障害高次脳機能障害の人など、すべての障害を対象に」「1日24時間の介護保障を可能に」「移動介護は個別給付に」など計11項目を求めるアピール文を採択した。

障害者自立支援法案:負担増に現場から不安や批判の声毎日新聞 2005.7.7)
 
施設長は自己負担をゼロにする窮余の策として生活保護の取得を勧めるが、木村さん親子は消極的だ。老後を見据えた貯金もできなくなるからだ。母親は「作業所に行けなくなるのはかわいそう。がんばれるところまでは私ががんばるしかない」と話している。【有田浩子】

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障害者自立支援:医療費負担を延期、与党が法案修正へ毎日新聞 2005.7.7)
 
衆院で審議中の障害者自立支援法案について、与党は精神障害者の通院費などを対象に原則1割の医療費負担を求める自立支援医療の実施時期を、今年10月から来年1月に延期するなどの修正案をまとめた。8日にも衆院厚労委に提出する。
さらに修正案では、目的に「自立と社会参加」の文言を入れ、障害者団体が求めている所得保障については、就労支援や税制改革などを含め、幅広く検討する項目を追加する。難病や発達障害なども対象にするよう、障害者の範囲の拡大も盛り込む見通し。【玉木達也】

厚労省、審議会に数値提供ミス「ずさん」と野党反発( 2005.7.8)
 
衆院厚生労働委員会で8日、審議中の障害者自立支援法案をめぐり、法案作成の過程で厚生労働省が同省の社会保障審議会障害者部会に誤ったデータを提供していたことが、野党側の指摘で明らかになった。野党側は法案作成の過程のずさんさが明らかになったと反発。審議が中断する場面もあった。
民主党藤田一枝議員、社民党阿部知子議員らが指摘した。藤田氏は、現行の身体障害者福祉法に基づく「更生医療」について、月平均の利用件数が国会提出資料で8万件とあるのに対して審議会の資料で98万件と食い違っていることを指摘。尾辻厚労相は「月間と年間の数字を間違えた単純ミス。申し訳ない」と答弁した。
厚労省側は、同データについては審議会で議論の対象にならなかったとして、法案への影響はないと説明したが、その後、質問に立った阿部氏が審議会に提出された別の資料についても追及。児童福祉法に基づく「育成医療」の利用人数が年5万人、14万人などと複数の値が混在していると指摘し、「医療費の高騰が大変だと印象づけるために利用人数を水増ししたのではないか」とただした。次回の委員会までに同省が数字を整理し、報告することになった。

全国心臓病の子どもを守る会事務局次長 水谷幸司さんに聞く---障害者自立支援法案の問題点(東京保険医協会『診療研究』407号)
これまでの説明では、旧育成医療、旧更生医療の対象は変更しないとしています。しかし原則として「障害者自立支援法」の対象は障害者であり、旧育成医療のように、「現存する疾患が将来障害を残すと認められる児童」をその対象にするのは、あくまで経過的な措置と考えられます。むしろ、更生医療が身体障害者手帳所持を要件としている現行では心筋梗塞狭心症などで緊急に入院して手術をした場合、手続き上間に合わずに更生医療を受けない事例も多くあることから、法の目的、定義に、「障害の予防」の観点を明記し、自立支援医療から身体障害者手帳の所持要件をなくすべきと考えます。
自立支援医療では、所得税30万円以上の世帯の場合は対象外とされています。この所得額は「世帯合算」によることにも注意が必要です。
これまで紹介してきましたが、月額の医療費が約80万円以上かかる場合には事実上の対象外となってしまいます。
自立支援医療は、「低所得世帯」および「重度かつ継続的に医療が必要な者」については特別の配慮を行っています。しかし「低所得世帯」にしても、生活保護世帯のみ負担なしで、「市町村民税課税世帯」からは定額の負担をとることになっています。また、「重度かつ継続」の対象範囲についても、育成・更生医療は、腎臓、小腸、免疫の3疾患群のみと定められ、心臓病で入退院を繰り返す重症患者への適用は認められません。
低所得者および「重度かつ継続」以外の疾病治療(心臓もこのなかに該当)について、厚労省は再認定を認める場合や拒否する場合の要件を1年以内に明確化するとしています。
当面は育成医療、更生医療の対象はそのままとするが、1年後には、低所得者と「重度かつ継続」以外の疾病治療については、グランドデザインの当初案どおり基本的に初期治療から1年間のみを対象とし、以後は対象外にしたいとのねらいがあることもよく見ておく必要があります。

「公費負担医療」はどうなる 更生・育成医療の果たしてきた役割から考える(京都保険医新聞 第2489号)
自立支援医療給付における1割の自己負担には、高額療養費の負担限度額が適用される。従って、自己負担額が高額療養費負担限度を超えた時点で、3割負担の層と負担上限設定が同じになるため、事実上公費負担が行われない。この場合、高額療養費分は償還払いとなり、いったん窓口で高額な支払いを求められる。つまり、心臓手術など高額な医療費がかかる場合に、自己負担額に合わせ、高額療養費分の立替払いが必要となる。18歳未満の「育成医療」受給の場合は、経過措置(3年後見直し)により当面立替の必要はないとされているが、「更生医療」は、同経過措置が適用されないため、経済的負担により、生命が脅かされる事態が現実のものとなる()。
障害を持つ人たち、障害を持つ子どもの親たちにとって、必要な医療を低額・無料で受けられる制度は、最低限必要な福祉施策の一つではないだろうか。障害があるが故に必要な治療、それさえも「受益」とみなす自立支援法案の思想からは、もはや「福祉」と呼べる施策が生み出されることはない(なお、国における「更生医療」や「精神通院公費負担医療」の制度改変を睨み、独自施策を見直す動きが、いくつかの自治体に広がっていることを紹介しておく)。