カトリーナ

 

カトリーナのもたらした災禍内田樹の研究室)
 
このような階層化は人種差別を廃絶すれば改まるというものではあるまい。
人種が差別化指標として機能しなくなれば、出身地でも、言語でも、宗教でも、学歴でも、教養でも、どんなものでもそれに代替することは可能であり、あらたな指標に基づいて人々は階層化される。
「年収」と「名声」という明徴的な尺度で国民を上から下まで序列化し、その序列をよじ登りたいという欲望を主要な社会的活力源としている限り、アメリカ社会は階層的であることを止められない。
第二の徴候はアメリカが銃社会だということである。
アメリカの民間人が所有している銃器数は2億2千万丁(警察官や軍人が所有している銃器を除いて)。つまり、赤ん坊から老人まで、国民一人が一丁以上の銃を所有しているのである。
銃による犯罪は年間60万件、銃による死亡者は年間3万人。過去20年間で60万人(これはシアトルの人口と同じ)が銃で死んでいる計算になる。
これは1791年に制定された権利章典の第二条で世界にも類のない「市民の武装権」(「国民が武器を保有し、携行する権利はこれを冒してはならない」)が認められているからである。