撤収完了

arcturus2006-07-23

 
隊員の方々に、ご家族に
ほんとうにおつかれさまでした、と申し上げたいです。

イラク派遣の陸自部隊、全員が撤収完了(読売新聞 2006.7.17)
 
7日から6派に分かれてサマワを出発した約600人の部隊は、全員無事にイラクからの撤収を終えた。クウェートで健康診断などを済ませた後、今月末までに日本へ帰国する。
陸自部隊の輸送などを担当してきた航空自衛隊約200人は、米軍や国連などの物資輸送のため、引き続きクウェートに残り、今後はバグダッドイラク北部にも活動空域を広げる。
陸自は、イラク復興支援特別措置法に基づき、2004年1月から2年半にわたり、サマワを拠点にムサンナ県内で復興支援活動を展開した。この間、100〜500人規模の部隊を3〜6か月交代で派遣、総人員は5500人に上った。学校や診療所、道路、浄水場など133か所の公共施設の復旧・整備をしたほか、5万3500トンの給水、277回の医療技術指導を行った。
イラク派遣にかかった総費用(今年度分は予算額)は、陸自分だけで約728億円。

 

記事いろいろ。

イラク撤退:陸上自衛隊/上 戦地 テロ想定、国内訓練(毎日新聞 2006.7.9)
 
サマワから復興支援の現場に向かう4人乗りの装甲車は、攻撃を受けないよう高速運転が求められる。舗装されていない道路では、「頭が天井にぶつかりそう」(派遣隊員)になり、夏は車内温度が50度を超えた。
それでも隊員は車を降りれば、イラク人に笑顔を見せた。今年1月から5月まで派遣された部隊を指揮した小野寺靖1佐(47)は「緊張と不安は表に出せない。最大の安全確保は住民からの信頼だ。反感を持たれたら終わりなんです」と話す。

イラク撤退:陸上自衛隊/中 支援 防備固め、時間限る(毎日新聞 2006.7.11)
 
こうした活動について、サマワに住む技術者(35)は「基地(宿営地)に閉じこもり、外出しない。市民を恐れているようにさえ見えた。サマワの知識層は、日本の駐留は米国を満足させるためと悟っている」と語る。一方、派遣により雇用機会に恵まれた男性(55)は「隊員たちは礼儀正しく好感が持てた。自衛隊の駐留延長のためのデモをやりたいと思うぐらいだ。イラク政府は日本企業を誘致するため努力してほしい」と話す。

イラク撤退:陸上自衛隊/下 帰国 心のケア、調査続く(毎日新聞 2006.7.12)
 
サマワの宿営地内にある床面積1200平方メートルの厚生棟。中央にソファが並べられ、インターネットや読書ができる施設の片隅に、10畳ほどの個室がある。カウンセラーが常駐するこの部屋では、隊員から「迫撃砲の音を聞いてから眠れない」といった相談が寄せられる。陸自は、帰国の時だけではなく、常時、隊員らの心のケアに気を配ってきた。

自衛隊イラク派遣:陸自撤退 「復興支援に満足」78%−−サマワ住民に意識調査(毎日新聞 2006.7.12)
 
イラク南部サマワに約2年半駐留した陸上自衛隊が撤収するのを機に、共同通信社は地元住民1000人を対象に緊急意識調査を実施。その結果、陸自の復興支援に「満足している」と答えた住民が78.7%に達したことが11日までに分かった。調査は04年1月以来4回目。「陸自は占領軍」との意見が初めて10%を超え、12.4%に達した。調査は地元紙に委託し、サマワ県都とするムサンナ県で実施した。

社説:陸自イラク撤収 この経験を検証しよう(朝日新聞 2006.7.20)
 
自衛隊は1日最大1100人、延べ49万人近い地元の人々を雇った。学校などの補修を請け負わせたり、通訳や宿営地内の雑務にあてたりするためだ。
仕事と賃金を与えることで地元の期待に応え、民生を安定させようとの手法だったことは理解できる。同時に、宿営地外の作業に隊員を長時間さらすリスクを少なくする効用も大きかった。仕事を発注しながらテロやデモの情報を集め、不満があれば手当てし、危険を察知すれば避ける。苦労しながら編み出した安全確保の知恵でもあったろう。
それに加えて、日本政府は途上国援助で発電所やスポーツスタジアム、遊歩道などの建設や改修を次々に約束した。イラク側から「小さな地方都市のサマワに、なぜそれほど支援を集中するのか」との疑問があがったのも当然だ。人道復興支援が目的ならば、もっと効率的な形がありえたのではないか。
自衛隊の派遣には今年3月末までで743億円もかかっている。地元の住民を雇用してインフラなどを復旧し、生活を応援するのなら、支援の実績があるNGOを通じた方が同じ費用でより大きな貢献ができたかもしれない。官民をあげて今回のやり方を検証すべきだ。
もう一つ残念なのは、この間の自衛隊の姿が国民にあまり伝わらなかったことである。サマワ一帯を含むイラクには邦人退避勧告が出され、メディアの側も十分な報道ができなかった。
自衛隊内からは「隊員の働きを国民に知ってほしかった」との声も聞く。撤収をめぐっても、政府は報道を規制した。隊員の安全への配慮は分かるが、クウェートへ出てきた部隊の取材まで厳しく制約したのは行き過ぎだ。

イラク居残り 空自の役割は(東京新聞 2006.7.19)
 
恒久法制定は日本独自の判断で自衛隊を海外に派遣する「普通の国」に転換させるとされる。しかし森田氏は「現実には米国に追随することにしかならない」と喝破する。「自衛隊イラク派遣も国連決議に基づくものではなく、米国の要請に応じただけのこと。このままでは自衛隊は米軍の下請け軍隊になってしまう。その危険が目前に迫っているのに、どこからも反対の声は聞こえてこない。犬養毅首相が殺害された五・一五事件(一九三二年)のとき、あるジャーナリストは『誰も発言しないことこそが最も恐ろしい』と書いた。今、その状況と似てきている」
神浦氏は空自隊員の気持ちをこう代弁する。「そもそも、多国籍軍の輸送力で足りているのに、ブッシュ大統領から言われたから(空自を残す)というのが本当のところ。自衛隊員は、おかしいと思っても、自分が拒否すれば別の隊員が行かされるから、黙って行くしかない。そんな彼らの安全を、本当に保証できるのか。空自としては、たまらない話だろう」

イラク派遣差し止め訴訟、違憲確認の訴え却下 大阪地裁(朝日新聞 2006.7.20)
 
自衛隊イラク派遣は武力行使を禁じた憲法9条に違反するとして、作家の小田実さんら1049人が国を相手に派遣の違憲確認と差し止め、1人あたり1万〜100万円の慰謝料を求めた訴訟の判決が20日、大阪地裁であった。大西忠重裁判長は原告が精神的苦痛を受けたことは認めたが、「原告の願いは政策批判活動などによって実現されるべきものであり、法的保護に値する利益とは言えない」と述べ、派遣差し止めと慰謝料請求は棄却した。違憲確認請求については「原告の権利の救済手段として適切ではない」として却下し、憲法判断に踏み込まなかった。原告側は控訴する方針。原告側によると、自衛隊イラク派遣をめぐる集団訴訟は全国の11地裁で起こされ、これまで大阪、甲府、名古屋、静岡4地裁で原告側が敗訴している。
判決はまず、違憲確認請求の有効性について検討。「原告の権利が侵害されて被害が発生した場合は損害賠償を求めるべきであり、自衛隊の派遣について違憲確認を求めることは適切ではない」と判断した。原告が差し止め請求の根拠とした平和的生存権や幸福追求権などについては、「個々の具体的権利を保障したものではなく、民事訴訟上の差し止め請求権が発生する余地はない」と述べた。
生命・身体への危険を防ぐことができる人格権の侵害については「危険は客観的に現実化しておらず、イラクに住むイラク人原告2人への危険も、米・英両国による戦闘行為によるものだ」と退けた。一方で、自衛隊派遣によって原告が戦争に加担したくないという信念を否定されるなどの精神的苦痛を受けたことは認めた。しかし、「間接民主制の下での政策批判や原告の見解の正当性を広めるための活動により、その苦痛は回復されるべきものだ」と述べ、慰謝料請求を退けた。
判決後に記者会見した小田さんは「(派遣が)違憲か否かを決めるのが国会というなら、裁判所は何のためにあるのか。裁判官は法廷で判決理由すら言わず、市民に対する侮辱だ」と語った。
西川徹矢・防衛庁長官官房長の話 国の主張が認められ、裁判所の理解が得られたと評価している。


自衛隊イラク派遣に反対する訴訟 〜 関西
イラク派兵違憲訴訟の会・東京

 
んと、統治行為論ていうのかな、よくわかんないけれど。
違憲確認を求めることは適切ではない」し、去年の総選挙では争点になりさえしなかった。
いったん決まってしまえば「差し止め請求権が発生する余地はない」
でもそれなら、もっと誠実な国会答弁でなければならないと思うんです。「非戦闘地域は安全な場所だとは1回も言っていない」では、あんまりじゃないですか。純粋な人道支援というならどうして陸海空3部隊そろっての派遣にこだわる必要があるのかもわからなかった。平和ボケと非難されるかもですけれども。
そんななかで「賞恤金は1億に増やす」「新しく記念碑施設を作る」のような政治家の発言は、まるで死んでこいと言ってるように聞こえて、ご家族や友人や、そんなひとたちはどんな想いでいるのか、私はいったいどう見送ればいいのか、わからなかったです。この人道復興支援のために、あるいは国益のために、自衛隊員に犠牲が出るかもしれない覚悟なんてできなかった。そんな覚悟など必要ない、といえる状況だとも思えなかった。だから「日本国民の精神が試される」を聞いて、やりきれない気持ちになりました…
で、その首相の会見みて書いたメモ、すげー乱暴(笑)

まるで脅迫ではないですか…
アメリカの戦闘行為を正統とみせるシンボルになることが国際貢献なのでしょうか。そのためには「一般国民にはできないことができる」からと、私たちは「安全ではない非戦闘地域」に憲法に反する覚悟で自衛隊員を派遣しなくてはならないのでしょうか。復興支援に反対するつもりはありませんが、復興支援のために自衛隊員に「泥沼で死んでほしい」と、私には言えません。
最新の軍備を備えた米軍に多数の死者が出ている地で、なにをもてば正当防衛が可能になるのでしょうか。このまま派遣するのなら政府は、ほかならぬ日本国民の気持ちを踏み躙ったことになると思います。

 
赴任前によくテレビに出てらした番匠さんの、いかにも鍛錬を積んでる感がある笑顔とハズさないアピールぶりには(批判をかわすためにはみえたけれど)、いざとなればこーゆうキャラが出てくるんだ自衛隊て、へんなとこで感心したのを憶えてます。
 
 
ついでに古いメモから、もう1つ。

━━(憲法裁判所が)ドイツ連邦軍NATO域外派兵問題など政治的に大きな対立がある問題について判断し、政治を動かすことができるのはどうしてでしょう。

ドイツではしばしば、政治家が最終的に決めたくないと考える傾向がある。もう1つは我々の意識の深いところと関係している。一般論になってしまうが、米国が民主主義に大きな信頼を置いているとすれば、ドイツでは政治や民主主義よりも法に大きな信頼を置いているように思う。過去の歴史的な経験と無関係ではない。
 
━━極めて強い権限をもつ憲法裁判所が機能する社会的な条件は何なのでしょうか。

ドイツの歴史ではないか。敗戦で東西に分断され、国民の自己同一化の対象はもはや国民国家ではなくなった。歴史でもないし文化でもない。そんななかで多くのドイツ国民が大切に感じ、自己同一化の対象にしたのが憲法だった。それは「憲法愛国主義」と言われることもある。そうした基盤が社会にあるかどうかではないだろうか。
 
前ドイツ憲法裁判所裁判官 ディーダー・グリム氏インタビュー(朝日新聞 2004.4.30)より

どいつもこいつもむずい。しゃれになってるの、ちょっとうれしい(おバカ)
猫にもわかる刑法、とかないかな。ぶー
 
 
 

施設を造ったり医療支援を実施したりするだけでなく、案件や業者の選定過程で「公正、適正」な行政府の統治能力を育てる復興支援を心がけた。
イラク復興業務支援隊第4次隊長・斉藤剛1佐 朝日新聞2006.7.21より)

厳しい制約のなかで、とてもご苦労されたこととは思うんです。
でも、正直言うと、この派遣が和平に貢献したとかって実感もなくて、これしかなかったのかと、いまでも思います。だけど、anhedoniaさんが書いてらした「だれも殺さずだれも殺されず」に帰ってこられて、ほんとうによかったです。
ん、私の安全や快適が危険を強いているひとは、なにもこの「国際貢献」に派遣された隊員の方々だけでないのはわかっているのに、いやらしい言い方ですね…
 
 
 

イラクで今年上半期に1万4000人死亡 国連報告書(CNN 2006.7.19)
 
報告書はモスクを狙った自爆テロや、労働者への襲撃、遺体収容、判事暗殺、刑務所内の殺人、イスラム聖職者への襲撃といった実例を挙げている。また、過激派が同性愛者を標的にする事件が、昨年から発生していると指摘。同性愛者への偏見を強めている非寛容な姿勢が、民族や宗教、服装が異なる人々にも向けられているとしている。


 
 
 
人質事件。
香田証生さんのこと…
派遣反対ビラを配っての逮捕。
いろんなことがあって、たしかになにかが変わった気がする。
私たちの、いったいなにが試されたかな。