水俣病関西訴訟最高裁判決

 
水俣病関西訴訟:国と熊本県の行政責任を認定 最高裁
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20041015k0000e040097000c.html

もう一つの争点だった認定基準では、国の「52年判断条件(昭和52年の通知)」で水俣病と認められなかった原告を水俣病と認めた2審判断を「妥当」と支持した。これにより、感覚障害に加えて運動失調や視野狭さくなどの症状がなければ水俣病と認めない52年判断条件は、否定された。

できうる限りの方策をとらず、被害者救済を第一としてこなかった行政の責任が認められました。
私には、国が示す認定基準は救済すべき被害者を少なくするためのものとしか思えません。
熊本日日新聞 『水俣病百科』 2004年10月8日〜13日掲載分に、
水俣病関西訴訟上告審で問われていたものについての記事があります。
 
ひとの生命や健康と、引き換えにしていいものなどないはずです。
長期に渡るくるしみのなかで政治決着を選ぶしかなかった方々が今日の判決をどのような想いで聞かれたか
私には推し測ることもできません。
未認定とされている原告の方々は、和解を拒否したことで医療保障も受けられないなかでの裁判でした。
病者にとっての22年間は、あまりに長いと思わないではいられません。
勝訴でも失ったものはかえらない、先の不安は消えない終わらないでしょう…
 
被害者の病状調査やデータの整理さえも満足になされていないそうですが、
まだわからないことの多い水銀中毒についての治療・研究に国・県は責任を持って取り組み
被害者の救済に全力を尽くしてほしいです。
 
 
 

最高裁、行政責任認める「規制怠り被害拡大」国の認定基準否定(毎日新聞 2004.10/16)
 
熊本、鹿児島両県の不知火海沿岸から関西に移住した水俣病の未認定患者45人が、国と熊本県に約1億1800万円の賠償を求めた「水俣病関西訴訟」の上告審判決が15日、最高裁第2小法廷であった。北川弘治裁判長は「国と県が(原因企業の)チッソに対する排水規制を怠り、被害を拡大させたのは明らかだ」と行政責任を認定し、37人への7150万円の支払いを命じた。
水俣病を含む4大公害訴訟で、行政責任を巡る最高裁判断は初めて。
1956年の公式発見から48年を経て国と県の敗訴が確定した。

最高裁が認定した行政責任は、45人への8800万円の支払いを命じた大阪高裁判決(01年4月)と同じ。
行政責任を認めず1人当たり260万円を支払って幕引きを図った95年の政府解決策は正当性を失った。
さらに認定申請を棄却・保留された原告たちを水俣病メチル水銀中毒症)と認めたことから、国は認定基準の見直しを迫られる。
行政責任について判決は、59年11月に厚生省(当時)の食品衛生調査会が「原因は魚介類の有機水銀化合物」と答申したことを重視。「行政は住民の生命、健康に重大な影響が出ていることを当時認識しており、原因が有機水銀で、排出源はチッソ水俣工場だと高い確率で分かっていた」と認定した。
そのうえで「被害の深刻さに照らせば、直ちに水質2法(旧水質保全法、旧工場排水規制法)や県漁業調整規則に基づいて工場排水を規制すべきであり、これらの規制権限が行使されていれば、被害拡大を防ぐことができた」と結論づけた。
また、規制を始めるべき時期を、調査会答申の翌月末と判断したため、原告のうち59年12月以前に不知火海沿岸から転居した8人については、請求を認めた2審判決の一部を破棄、賠償命令の対象から除いた。ただ、チッソの賠償責任は2審判決で確定しており、8人に金銭上の不利益はない。

もう一つの争点だった認定基準では、国の「52年判断条件(昭和52年の通知)」で水俣病と認められなかった原告を水俣病と認めた2審判断を「妥当」と支持した。これにより、感覚障害に加えて運動失調や視野狭さくなどの症状がなければ水俣病と認めない52年判断条件は、否定された。
水俣病では、主要患者5団体が政府解決策を受け入れ、96年5月までに3高裁4地裁で係争中の訴訟を取り下げたため、行政責任を問う訴訟としては関西訴訟だけが継続していた。
ほかの4大公害訴訟である▽イタイイタイ病新潟水俣病四日市ぜんそくについては、最高裁判決前に和解するなどして終結している。【小林直】
 
環境省、基準変えぬ方針
最高裁判決を受け、環境省は15日、水俣病に関する国の認定基準を見直したり、患者への追加補償はしないという見解を示した。滝沢秀次郎・同省環境保健部長が同日の会見で明らかにした。
国の認定基準は環境庁(当時)が通知した「52年判断条件」に基づいている。四肢の感覚障害のほか、運動失調など複数の症状の組み合わせを必要としている。最高裁の判決では、感覚障害だけによる「メチル水銀中毒症(水俣病)」を認めたが、滝沢部長は「行政の判断基準と裁判所の判断は違う」と話した。【河内敏康】

 
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判決理由の骨子
▽国と熊本県は1959年11月末の時点で、水俣病の原因物質が有機水銀化合物であり、排出源がチッソ水俣工場だと高い確率で認識し得る状況にあった
▽59年12月末には水質2法などに基づく規制権限を行使して被害拡大を防ぐことができたが、60年1月以降もその権限を行使しなかったのは違法で、国と県は賠償責任を負う
▽原告を水俣病と認めた大阪高裁の判断は肯定できる
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◇救済に向け画期的−−原告・弁護団などの声明
国と県の不法行為責任が認められたことは、高度経済成長のゆがみを背負ってきた患者の全面救済と水俣病問題の完全解決の実現に画期的なものと評価できる。
国が患者全員に謝罪し、救済のための立法・行政措置を講じるよう申し入れる。
 
◇厳粛に受け止める−−小池百合子環境相の話
判決を厳粛に受け止め、被害の拡大を防止できなかったことを真摯に反省し、悲惨な公害を繰り返してはならないとの決意を新たにしています。亡くなられた方々に改めて深い哀悼の念をささげます。
 
◇誠心誠意対応する−−潮谷義子熊本県知事の話
原告や判決を待たず無念のうちに亡くなった方々に深くおわびする。被害拡大を防げなかったことは重く反省しなければならない。今後の対応については誠心誠意、取り組みたい。