HIV感染者の就労意欲高く、9割以上が「今後も働きたい」と回答(日経BP 2004.12.14)
 
HIV感染者の就労意欲は高く、9割以上の人が今後も働きたい意向を持っていることが分かった。その一方で、病名を開示できない精神的な負担感が障害とする声も少なくなく、病名開示に対する職場の理解や支援が陽性者が働きやすい環境づくりに欠かせないことも浮き彫りになった。埼玉県立大学の若林チヒロ氏らが12月9日、日本エイズ学会で発表した。

研究グループは、HIV陽性者にとって働く上でどのような課題があるのか、働きやすい労働環境はどのようなものかを検討するため、調査を行った。対象は、20歳以上65歳未満の外来患者で、自己記入式の質問紙を外来看護師らが配布し郵送で回収した。発熱や嘔吐などの症状があるため依頼が困難な人や入院中の人、初診の人、日本語の読み書きが困難な人は対象外とした。
期間は2003年12月から2004年5月。全国のHIV治療の中核的医療機関(北海道1、九州1、大阪1、東京2)で配布。対象者783人のうち配布数は754件。有効回収565件、有効回収率72.2%だった。

調査では、将来の生活設計を年数で尋ねているが、「20年以上」が16.9%、「10年以上20年未満」が23.2%と、長期的な視点で捉えている人が多かった(n=557)。ただ「1年未満」(「先のことは考えられない」も含む)との回答も28.5%あり、精神面でのサポートが急がれる感染者も少なくなかった。
その上で、将来の就労について尋ねたところ、「健康状態に合わせた調整をして働きたい」が59.0%、「特に制限しないで働きたい」が37.2%で、合わせて96.2%もの人が働く意欲を示していた(n=556)。「できれば働きたくない」は3.2%と少数だった。

調査では現在の職場に対する評価も訪ねているが、「病名を隠すことの精神的負担」を「とても感じる」と回答した人が38.5%、「少し感じる」が30.8%と高率だった。その一方で、仕事のやりがいや面白さを「とても感じる」人は26.9%、「少し感じる」人は45.0%もあり、働くことを前向きに評価できている人が多いことも分かった。
就労への高い意欲を現実化するためにも、病名を隠すことの精神的負担を具体的に解消していく対策が急務といえる。(三和護)