水俣病関西訴訟最高裁判決から2ヶ月

 

県独自案策定 国の対応冷ややかな中、協議本格化(11月21日)
加えて同省の動きを縛っているのが、一九九五(平成七)年の政治決着。閣議了解を経て合意した政府解決策は「水俣病問題の最終的かつ全面解決」と位置付けられ、「公害健康被害補償法の枠を壊さず、感覚障害だけの救済を実現した超法規的措置」(政府関係者)だった。
自民党は県の対策案が正式決定した後で、「何らかの対応策を見出したい」(水俣問題小委メンバー)考え。しかし政治決着にかかわった有力議員らは、新たな救済策について「再び地域に不公平感を生み、混乱を与えるだけだ」「政府解決策の崩壊につながりかねない」と否定的な見解を示す。

井形・元中公審専門委員長 メチル水銀中毒「水俣病でない」は詭弁(12月1日)
現行の水俣病認定基準の策定にかかわった井形昭弘・元中央公害対策審議会水俣病問題専門委員会委員長(名古屋学芸大学長)は三十日、東京・永田町であった民主党水俣病対策ワーキングチーム(松野信夫座長)の会合に出席。関西訴訟の最高裁判決が「メチル水銀中毒症」と認めた原告を、環境省が「水俣病」と認めないことについて「メチル水銀中毒は水俣病。詭弁だ」と述べ、同省の姿勢を批判した。
同判決が追認した大阪高裁判決は原告らの被害を「メチル水銀中毒症」として認定。これに対し同省は「公害健康被害補償法(公健法)に基づく水俣病とは認められない」としている。
同氏は、認定基準の見直しについては「従来の認定業務や(一九九五年の政府解決策による)政治決着を根本からご破算にするものだ」と難色を示した。
井形氏は長年、鹿児島大医学部教授として水俣病の認定審査にあたり、同制度を維持する立場をとってきた。同制度について「汚染様式がまちまちの水俣病は非常に診断が難しく、一定の線引きで棄却された人の中に(水俣病は)十分あり得ると思う」と制度の限界を示唆。「だからこそ感覚障害のみのボーダーライン層を設定し、医療事業や政府解決策で救済した」と語った。

県独自対策案「認定基準」棚上げに原告側反発(12月6日)
五日、大阪市であった水俣病関西訴訟の原告・弁護団と県の二回目の交渉で、県は初めて原告側に独自にまとめた対策案を示した。しかし、原告らが求める認定基準の見直しを棚上げにしたままの対策案に、原告側は「答えにもなっていない」と反発。九日に始まる県と環境省との同案についての協議は、さらに不透明さを増した。
県は対策案を策定する際、政府解決策と今回の原告らを含む未認定患者の救済策のバランスに神経をとがらせた。「原告らの救済とのバランス次第では、政府解決策で苦渋の選択をして和解に応じた人たちから不満の声も上がりかねない。そうなると解決策の枠組み自体が揺らぐ」(県幹部)からだ。

 
 
12日放送NHKスペシャル『不信の連鎖 水俣病は終わらない』
 
11月24日に行われた環境省と原告の交渉*1の様子が取材されていました。

判断基準を見直す根拠として、この判決はなりえない。
判決を受けて、なにもしないと言っているわけではなくて、全体の議論のなかで検討したい。ただし(52年)判断条件については、裁判でも否定されていないということで、これを見直すということが解決というか、何かするということにはならない。(環境保健部企画課 柴垣泰介課長)

環境省 療養費支給など姿勢転換(12月10日)
水俣病の被害拡大をめぐる国、県の責任が確定した水俣病関西訴訟最高裁判決から二カ月。環境省は九日、同訴訟原告への療養費支給や、総合対策医療事業の拡充を実施する方針を初めて打ち出した。具体策を示さなかった同省が当面の策として、「できることから実施する」姿勢に転じたのは、増幅する批判をかわすと同時に、政治決着した患者団体の理解も得られると判断したためだ。
もともと、同省内には判決直後から「最高裁が認めた被害者に何もしないでは済まない」との共通認識はあり、対策を打ち出すタイミングを見計らっていた。
そうした中、関西訴訟原告・弁護団は県に対して療養費支給などを要請。政府解決策で和解した患者四団体の代表も三日、同原告への医療費支給を含む要望を提出した。政治決着の枠組みを最重視する同省にとって、和解四団体のお墨付きを得たことは「ハードルの一つをクリアした」ことを意味していた。

この総合対策医療事業の拡充には、認定基準の見直しは含まれていません。
番組をみて、原告の方々にとって「水俣病と認定される」が大きい意味をもつのだと、あらためて感じました。
くるしみを理解されてこなかったという想いは医療費や賠償金などで癒されたり消えてなくならないのだと思います。
病むことの孤独を、長期にわたって理不尽に強いてきました。
なのに応えることは、できないでしょうか…
 
 
最高裁判決後に認定申請したひとは167人。*2熊本県は2万人以上の潜在患者を想定しています。

認定制度の最大の問題点は、被害者が自分で手を上げなければ救われないという本人申請主義。申請しない人がほったらかしにされることがあってはならない。(浴野成生・熊本大大学院医学薬学研究部教授)*3

 
 
 

swan_slab 『うわ、番組みそびれた。テレビ離れが著しいスワンです。最近のNHKの不祥事と絡めて腰がひけた番組編集になっているとの批判もあるようですが、いかがでしたか。』(2004/12/15 02:11)
 
 
chisya 『“だめな編集の見本”ですか…
“国の対応がまずいために、疫学的に見て明らかに「水俣病」である患者の人たちを、救済できない、救済しないのが問題”て、私は見てしまいましたよ。誰もが納得できるものでない認定基準についての不信がテーマでしたし、本来は医学的であるだけのはずの診断行為を【認定=補償】が歪めてしまったという取り上げ方でしたけれども。

補償協定が基本になっていることは番組でもいってました。私は政治決着がこじらせている部分が大きいように思っています。
判断基準については、柴垣課長が「判決を踏まえて変えるということにはならない」と繰り返すばかりで、判決を受けて新たに病像について検討することも「してございません」でしたし「それを不作為っていうんだよ」の声も飛んでました。
なにも一律の補償金を求めているわけではない、軽度ではあるにしても“水俣病であることの救済”がほしいとしているのでしょう??
なにを決めるにしても、ある程度の公平性をもたせるには疫学調査は基本になるはずです。それにさえ取り組もうとはしないのはどうしてでしょうか。

「政治解決の人も行政認定の人も、みんな水俣病だって呼んでやってくださいよ。いいですよ、補償協定と連動するのが怖いなら、あれは棚上げだって言ったらいいじゃないですか」と、支援者が言ってらしたのが残っています。
人生を振り返るとき「このくるしみはなんだったのか」に答えがほしい、それはもう譲れないって気持ちに、最高裁判決が出たいまなら応えることは、できるはずじゃないですか…』(2004/12/16 00:11)
 
 
swan_slab 『どうもっす。なるほど。
もうチッソだけの汚染者責任ではないのだから、補償協定自体にもメスをいれるべきじゃないですかね。せーので同時に政府解決策もすべてをひっくり返さなければ何も変わらないかも。その勇気と実行力が問われているのでは。』(2004/12/16 01:22)
 
 
chisya 『前提がひっくり返ったのですもの。
地道に1つひとつを検証しなおす誠実さ、ではないかなって。
いたずらに時間をかけてはほしくないけれども…』(2004/12/16 02:13)