情動の科学的解明と教育等への応用に関する検討会発足

 

文部省:「きれる子」対策で検討会設置 各分野専門家集め、科学的に情報解明(毎日新聞 2005.1.11)
 
「きれやすい子ども」の原因と対処法を科学的に探るため、文部科学省は11日、脳科学や教育学などの専門家による検討会を発足させる。子どもの情動に関する横断的な検討会の設置は初めて。「心にトラブルを抱える子どもたちの現状を科学的に把握する第一歩にしたい」としている。

昨年、長崎県佐世保市で小学6年生が同級生に刺殺される事件が起きたほか、一昨年は長崎市で中学1年生による幼児誘拐殺人事件が起きるなど、子どもによる犯罪が相次いだ。教育現場では、理性的に対応できずすぐに「きれる」子どもが問題になっている。
こうした子どもたちの心理の研究が進む一方、MRI(磁気共鳴画像化装置)やPET(陽電子放出断層撮影)などで、脳の働きを画像で視覚的にとらえることが可能になり、脳に刺激を与える時期によって脳の発達に変化があることが明らかになってきた。しかし、研究の分野を超えた連携は少なく、情報は分散している。

11日に初会合を開く「情動の科学的解明と教育等への応用に関する検討会」(座長・有馬朗人元文相)には、脳科学、精神医学、心理学、教育学などの広範な分野の専門家が参加する。半年かけて各分野の研究の進ちょく状況を情報交換する。
検討結果を踏まえ、06年度以降、客観的な診断を進めるため、子どもの脳などに関するデータ集積に取り組む方針だ。

検討会委員で、子どもの心の問題に詳しい森則夫・浜松医科大医学部教授(精神神経科)は「子どもの心の病気の解明は遅れているが、最近の研究で遺伝子レベルの原因も分かりつつある。子どもたちをめぐる問題を単なる社会問題として論じるのではなく、医学と教育の専門家が総合的に対応する環境作りを進めるべきだ」と話している。【永山悦子】