自閉症

 

自閉症患者は診断基準の変更をきっかけに増加、米国調査から(BP 2005.1.18)
 
自閉症の原因は未だ明らかではないが、英国では、MMRワクチン(麻疹、風疹、流行性耳下腺炎の3種混合ワクチン)と自閉症の関係が疑われて以来、予防接種の接種率が低下した。英British Medical Journal誌2005年1月15日号のNews roundupでは、米国での自閉症の発症率はある時期以降、上昇しているが、その原因は診断基準の変更などにあるだろう、とした論文を紹介している。
米国で自閉症発症率が実質的に増加したのは1988年以降だ。論文の筆頭著者で米国Mayo ClinicのWilliam Barbaresi氏によると、自閉症の診断は1990年代初めまで発達遅滞を中心に行われていた。しかし、精神障害の分類と診断の手引きである「Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders」第3版の改訂版(DSM-III-R)が1987年に、第4版(DSM-IV)が1994年に発行されてからは、自閉症の診断がより広範かつ正確に行われるようになった。

ほぼ同時期に世界保健機関(WHO)の診断基準「International Classification of Diseases」にも同様の変更が加えられた。また、障害児への特別教育に関する米国連邦法の適用範囲が1991年に拡大され、より多くの病気に、より手厚いサービスが提供されるようになった。同時に、自閉症に対する一般の認識も高まった。
今回、米Archives of Pediatrics and Adolescent Medicine誌2005年1月号に報告された研究は、米ミネソタ州Olmsted郡の集団を対象に行われた。医療記録を基に、21歳未満の住民約3万6000人を対象として、1976年から1997年までの各年の自閉症発症率を調べ、併せて記載されている症状と診断基準を照らし合わせた。
その結果、自閉症の発症率は、1980〜1983年には小児10万人当たり5.5人だったが、1995〜1997年には同44.9人と8倍以上に増えていた。SM-IVに基づいて診断されていた患者は124人で、その多くが、発達遅滞、言語の遅れ、多動性障害、精神遅滞などの症状から自閉症に分類されていた。
ミネソタ州で麻疹の予防接種が義務づけられたのは1967年だ。1973年に風疹、1978年には流行性耳下腺炎の予防接種が追加された。MMRワクチンの市販が許可された1971年から現在まで、水銀化合物であるチロメサールを含むMMRワクチンが広く使用されている。Barbaresi氏によると、MMRの予防接種を受けた米国の子供たちの自閉症発症率は確かに上昇していたが、1991年以降、MMRワクチンにチロメサールを添加しなくなったデンマークでも2000年まで自閉症患者は増え続けたという。
同氏らは、環境因子を完全に排除することはできないことを認めつつ、より広範かつ正確な診断基準が導入され、自閉症の認知が広まったことで、見かけ上の発症率が上昇したと見ている。以前は自閉症に含まれなかった子供にも自閉症との診断がつくようになり、米国のみならず欧州でも患者数が増えた、というのがBarbaresi氏らの考えだ。
原題は「Increase in autism due to change in definition, not MMR vaccine」、抜粋はこちらで閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)