学校5日制

 

土曜授業、現場が先行(朝日新聞 2004.12.18)
 
完全学校週5日制の中で土曜日に授業をする東京都立高校が、今年度の5校から来年度は17校と3倍以上に増えることが、都教育委員会のまとめでわかった。授業時間数の確保を求める高校側の声に応じ、都教委は「5日制の趣旨を損なわない範囲」と条件をつけて認めている。全国の公立高校で土曜日に補習をする学校は多いが、授業は珍しい。首都圏の私立中学では、完全週5日制をとらない学校が来年度7割を超える見込み。東京を中心にした学校現場では、「土曜授業」がすでに先行している。

「土曜授業」は週5日制の始まった02年に、八王子東高校(八王子市)が取り組み始めた。地域の中学生らに授業を公開するという名目で、年間十数日にわたって実施している。「土曜の授業実施は文科省が否定していたが、学力低下の危機感から何とかしなければ、と四苦八苦した」と当時校長だった殿前康雄氏。

多くの高校は授業時間を確保するため、月〜金曜に「7時間目」を設けているが、部活動の時間が短くなる。「『ゆとり教育』なのにゆとりがない。なぜ八王子東だけが認められるのか」。他の高校から「土曜授業」を希望する声が上がった。都教委は、土曜授業の「代休」として夏休みを長めにとるなどの形で、今年度から他校にも認めた。「夏場に冷房のない教室で授業をするより効率的だ」と各校の校長は言う。
今年度は八王子東のほか、国立、南多摩など5校が土曜授業を始め、来年度は17校が取り組む。
来年度、文京高校(豊島区)は年間30日の土曜授業を組む方針だ。「学力をつけるには、週4日は7時間にしなければならず、部活動が犠牲になる」と高木克校長は話す。

◆首都圏私立中 完全5日制は3割
私立の中高校は既に土曜授業を展開している。「学研」教育情報編集室の調査によると、首都圏の私立中学校273校中、今年度、完全週5日制にしているのは30%。来年度は277校中77校で、28%に落ちる。今年度から6日制に切り替えた森村学園(横浜市)の宮岡浩行・中高等部校長は「5日制という『軽乗用車』で『排気量』を大きくするのは困難だ。受験生の保護者は圧倒的に6日制支持」と語る。
受験事情に詳しい安田教育研究所の安田理代表は「不況と少子化の中、私立が公立との違いを出そうとしてきたのが学力対策。進学実績を上げるために6日制に戻す私学が年々増えている。公立が6日制に乗り出すなら、私学にとって脅威だ」と話している。

「ゆとり」転換、主要教科の授業時間拡大…中山文科相(読売新聞 2005.1.18)
 
中山文部科学相は18日、子どもたちの学力低下問題について、「国語、数学などの主要教科の授業時間をいかに確保するかが課題だ」と述べ、授業時間を拡大したい意向を明らかにした。
そのうえで、体験重視の「総合的な学習の時間」を削減し、主要教科の授業に振り替えることも含めた見直しの必要性に言及した。文科相の地元・宮崎県で、記者団の質問に答えた。

「総合的な学習の時間」は2002年度に導入した新学習指導要領の目玉で、これを削減することは、文科省が推進してきた「ゆとり路線」から「学力重視」への大きな転換となる。
中山文科相はこの日、義務教育改革について教員や児童生徒と直接対話するスクールミーティングに初めて臨み、母校の宮崎県小林市立小林中を訪問した。その際、現場の教員から「『書けない』『読めない』という生徒が増えているのに、国語の授業は週5時間から4時間に減っている」「総合的な学習の時間や選択教科も大事だが、もう少し教科の時間が増えれば、授業を深められる」といった意見が相次いだ。
さらに、「土曜日に授業があったころは、もっと生徒と話ができていた」といった声も上がり、中山文科相が「土曜日に半日ぐらい授業をしてもいいのではないか」などと応じる場面もあった。

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朝日新聞(2005.1.12)より。

学校週5日制は、もともと労働者の時間短縮という国家政策から生まれたもので、教育的な理由から導入されたのではないと私はみている。5日制を含めたゆとり教育は、知識社会と言われる時代の変化に合わない。そういう意味で、自治体が様々な形で土曜補習を推進し始めたのは当然だ。(藤田英典 国際基督教大教授)

公立高校の教員に対し、代休を認めたり、保護者からの謝礼金受け取りを許可したりして
実質的に土曜授業を公認している自治体は20府県にのぼっているとのこと。