重い障害の子も近くの学校へ 大阪・高槻で「サポート教室」( 2005.2.17)
 

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同市の養護学校は1973年に肢体不自由児のために開校。児童生徒はピーク時には約60人いたが、1月11日現在で16人に減少。そのほとんどが身体に重度の障害があり、知的障害も重複している。
市教委は2000年、養護学校の今後の在り方について審議会に諮問。同校が廃校になれば、大半の子が通学に時間がかかる隣の茨木市の府立茨木養護学校に通わなければならなくなるため、保護者会は「実際に通うことはできず、在宅生活を余儀なくされる」と、約5万人の署名を集め、存続などを求めてきた。
児童生徒の減少などを理由に、審議会が「廃止やむなし」と答申した後も、両者は協議を重ね、結局、障害児支援の新しい考え方も採り入れた形で、「サポート教室」の設置が決まった。

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手話教育の充実を求める意見書
 
 

http://d.hatena.ne.jp/fivefogs/20031009#p1
県内では就学指導委員会を廃止するところがあり、新聞では「画期的な先見性」とはやし立てられていた。保護者の考えだけで子どもが教育を受ける『場』が決まる。それが時代の流れなのかもしれないが、何か、何かが違っているように感じられてならない。

 
 
 

政治主導の「脱ゆとり」 文科相、教育見直し発言次々(朝日新聞 2005.2.20)
 
雪崩をうったかのようにゆとり教育の大転換が始まった。「もはや世界のトップではない」。文部科学省学力低下の現状をかつてない調子で認めた国際学力調査の結果公表から2カ月。この間、自民党から「ゆとり批判」の火の手が上がり、中山文科相の路線転換発言が相次いだ。いまの学習指導要領も全面見直しに向けて審議が始まった。きちんとした検証もない性急な改革に、学校現場では先取りの動きが出る一方で、関係者からは無力感も漂う。

学力低下に自民騒然
「担当局長はこの結果を予想していたのか」
ゆとり教育の失敗は明らかだ。誰が学力低下の責任をとるのか」
昨年12月17日、自民党本部で開かれた文教関係議員の会合は、直前に相次いで公表された国際学力調査結果を巡り騒然となった。同席していた歴代局長の近藤信司・文科審議官と御手洗康・事務次官(当時)が矢面に立ち、「つるし上げ」は延々と続いた。
国際学力調査について「世界のトップから転落」という文科省の見解は、中山文科相の意向を強く反映したものだった。「なかなか文科省学力低下を認めたがらなかった。ゆとり教育のせいじゃないかといわれるのが嫌だということだった」。のちに中山文科相はそう明かしている。

腰が重い文科官僚に対して、中山文科相の「脱ゆとり」発言が続いた。
「土曜日に授業をやりたいという現場の要望がある。学校や市町村などの裁量に任せてもよい」(昨年12月、朝日新聞のインタビューで)
「総合的な学習の時間や、選択教科をどうするかを含め、国語とか算数とかにもう少し力を注ぐべきではないか」(今年1月、宮崎県内のスクールミーティングで)

今月15日の中央教育審議会総会で、中山文科相は「ゆとり教育」を軸とするいまの学習指導要領を秋までに全面的に見直すよう審議を要請した。検討事項には、総合的学習の授業時数や土曜日の活用など、一連の文科相発言の内容がすべて盛り込まれている。
ある文科省幹部は、文科相の発言がゆとり見直しの方向をリードしたとみる。「学力調査の結果公表後、中教審に検討課題を示せないまま2カ月が過ぎ、大臣の発言が続いてしまった」別の幹部は「大臣が求めているのは『スピード感』。場合によっては、一部を取り出して五月雨式に指導要領を改訂するかもしれない」と明かした。見直しはさらに加速するかもしれない。

文教族には異論も
中山氏は元大蔵官僚で、長く商工畑を歩んできた。教育政策にも熱心で文科相就任間もない昨年11月に、教育改革案「甦れ、日本!」を発表した。「世界は国際的な『知』の大競争時代。国家戦略としての教育改革が重要だ。このままでは日本は東洋の老小国になる」。国家を前面に出した危機感を強く訴えている。
こうした意識は産業界とも重なる。日本経済団体連合会が今月1日、中山文科相に基礎学力や倫理観などの養成を柱にした「提言」を手渡すと、文科相は「同感だ」と上機嫌だったという。

だが、これまで「ゆとり教育」を進めてきた自民党文教族議員からは異論が上がり始めた。
河村前文科相は「授業時数を増やせば、問題が解決するものではない」と述べ、習熟度別授業などによって学力の下位グループに手を打つことこそ重要だと強調する。
文教族の重鎮である森前首相も「ゆとり重視派」の一人。中山氏も出席した17日の派閥総会で「私は文科相と多少意見が違う。ゆとり教育は大賛成」と言い切った。
ただ、学習指導要領の見直しについて本格審議する中教審には無力感もある。ある委員は「中教審はお墨付きを与えるだけ。方向はもう決まっているじゃないか」と話した。

○学校現場は流れ先取り
「もう教科重視でいくしかないな……」。東京都内の中学校長はため息交じりに話す。1月の中山文科相の総合的学習見直し発言の時、ちょうど4月からの指導計画を立てていた。総合的学習に重点を置くつもりだったが、教育委員会の指導主事は新聞記事を見て「教科、特に国語に力を入れた方がいい」。教員らも「総合的学習はどうせ削られるんだから」。「指導要領の改訂前に、現場は流れを察知して先に変わる」と校長は語る。

研究者はどう見るか。
藤田英典国際基督教大教授(教育社会学)は指導要領スタート時から「4年で改訂される」と発言していた。「『自ら学び自ら考える』といっても基礎的な知識がなければ不可能だ」。週5日制については「毎週からまず隔週に戻して各教科の授業時数を考え、残った土曜休みは学校が地域と連携して、子どもの居場所確保を考えた方がよい」と語る。
一方、加藤幸次・上智大教授(学校教育学)は「詰め込み時代の再来になる。いじめや不登校が深刻化するのでは」と危惧(きぐ)する。「授業時数を増やせば学力が上がるというデータは何もない」と指摘し、「総合的学習は主体的に学習に取り組む姿勢を育てるのが狙いで、教科よりむしろこちらが基礎基本」と反論する。指導要領のあり方も「地方分権の時代、国が教育内容をすべて決める前提で検討するのはおかしい。拘束力を弱める大綱化の方向に踏み出すべきだ」と話している。

◇学習指導要領、強い影響力
学習指導要領は学校で学ぶ内容や量、教科書の中身も決める。文科省の建前は「最低基準」だが徹底され、現場は強い影響を受けざるを得ない。
中教審答申から新指導要領が改訂・告示されると、ただちに事務次官通知が各都道府県教委に流される。文科省が教育長や指導主事を集めた会議を開催し、新旧の指導要領の違いや、改訂の狙いなどを説明して徹底を図る。カリキュラム専門家の教育課程調査官が「新教育課程フォーラム」という説明会も全国で開き、指導主事や学校関係者のほか、希望する保護者らに説明する。各都道府県でも市町村教委の担当者や教員向けに説明会を開催する。
こうした指導のほかに、文科省から指導要領の「解説書」も出され、学校が趣旨を逸脱しないよう内容の徹底と浸透が図られる。
学習指導要領の改訂を踏まえて、学校でこれに基づく授業が始まるまでには数年かかる。新指導要領に準じた教科書を作成する必要があることと、2〜3年の移行期間を設けるためだ。