ゆとり教育

 
なんだかどこもスゴいです。とくに日経…
 

【主張】ゆとり教育 中教審も過ち認め是正を(産経 2005.2.21)
中山成彬文部科学相中央教育審議会に対し、「ゆとり教育」に基づく現行学習指導要領の全面的な見直しを要請した。秋までに指導要領改訂の方向性が示される。旧文部行政にとらわれない思い切った是正策を期待する。
中山文科相は主な検討課題として、(1)休みになっている土曜日や長期休業日の活用の仕方(2)教師の裁量に委ねられている総合学習のあり方(3)国語、理数教育の充実(4)道徳教育の改善−などを挙げた。文科相の諮問機関である中教審の各委員は、この中山氏の意向をよく理解して議論すべきである。
特に、現行指導要領で新設された総合学習については、「子供任せで先生が教えてくれない」「地域の見学施設などに丸投げされている」といった指摘があり、主要教科の授業時間を削ってまで行う必要があったかどうか、疑問だ。学校だけでなく、保護者や地域の声もよく聞く必要がある。
平成十四年度から実施されている現行指導要領は十年に作成され、旧指導要領より学習量を三割減らした。その元になったものは八年七月の中教審第一次答申である。「ゆとりの中で生きる力の育成」をうたい、学校週休二日制を二十一世紀初頭までに実現することを求めた。「総合学習の時間」の創設も、この答申に盛り込まれた。

社説1「ゆとり教育」の失敗をどう生かすか(日経 2005.2.19)
中山成彬文部科学相中央教育審議会の総会で「ゆとり教育」を掲げた現行の学習指導要領の全面的な見直しを要請した。同審議会は削減されてきた小中学校の授業時間数を増やすなど、新たな基本方策を今秋までにまとめる。強まる「学力低下」への批判の下、わずか3年で学習指導要領が改められる見通しだ。
過熱した受験競争への批判などを受けて「個性」や「生きる力」を目標に教科内容の3割削減などをすすめた「ゆとり教育」は国が掲げてきた教育行政の大きな柱である。
学校週5日制の完全実施や「総合的学習の時間」の導入などを通してその具体化を目指す現行の指導要領は有馬朗人文相(当時)が告示。小中学校では2002年度から、高校では03年度から実施された。
しかし知識の量や水準を抑制して学習意欲や関心を重視する「新学力観」に基づいた改革は、その意図に反して学力水準ばかりでなく子供たちの学習意欲も低下させているという批判が高まり、新指導要領への移行前から不安や不信を広げた。
これに対し文部科学省(文部省)トップは指導要領を「最低基準を定めたもの」と説明したり、補習や宿題を奨励するなど弥縫(びほう)策を重ねてきたが、昨年2つの国際調査で明らかになった日本の顕著な学力低下が「ゆとり教育」路線と深くかかわるとして、全面見直しを促す今回の中山文科相の要請となった。
中教審の審議では国語や数学・理科など新指導要領で削減された基本的な科目の標準的な授業時間をどう設計し直すのかが大きな課題となろう。また「ゆとり改革」のシンボルであり、教科の枠を超えた体験型の授業として導入された「総合的学習の時間」の効果を疑う声も目立っており、その削減も焦点となる。
新たな学習指導要領が実施から3年で見直されるのは異例であり、学校現場などの戸惑いも大きいが、学力低下批判や公立学校不信の高まりをよそにこの流れをひたすら推し進めてきた行政の責任は大きい。
失敗が明らかになった以上、その要因を十分に検証しながら子供たちの能力や意欲を高める学習の仕組みへ向けて、建前や官僚主導から脱した議論が中教審には求められる。
「生きる力」の育成という改革の目標を疑う人は少ないし、「詰め込み競争」の単純な復活で学力や意欲を取り戻せるわけでもないが、中央による画一的な統制など学校を取り巻くさまざまな制度要因が現場を硬直化させ、基礎学力の軽視につながったことを重く見る必要がある。
当時から中教審委員を務めている有力メンバーもいる。中教審はまず、これまでの答申や審議経過を検証し、行き過ぎたゆとり教育への反省を踏まえた議論を行うべきだろう。
今回の中教審では、義務教育費国庫負担制度のあり方についても、議論される。委員の人選をめぐり、地方から「三人枠」を主張する全国知事会側と「二人枠」を主張する文科省が対立し、地方代表が欠員のまま、審議がスタートした。ゆとり教育の是正は緊急課題であり、知事会側が候補者を出してこないからといって、審議を先延ばしにしてはならない。
将来の国づくりの基礎となる公教育には、国の行政指導と地方分権がともに必要である。学力問題において、国は指導を誤ったといえる。学力低下を防ぐため、土曜の補習授業や独自の学力テストを行っている地方自治体も多い。今度こそ、中教審は国の正しい学力対策を地方に示すべきである。

社説 中教審――学校にこそ「ゆとり」を(朝日 2005.2.17)
ゆとり教育」は誤解を招きやすい言葉だ。この理念が打ち出されてから、すでに10年以上たっているが、いまでも「ゆるみ教育」との批判もある。
詰め込み教育への反省に基づき、教える内容を絞って、どの子にも基礎学力をつけさせる。知識だけを重んじることを改めて、考える力や自発的に学ぶ態度を身につけさせる。個性を重視する。
それが「ゆとり教育」の理念だ。変化の激しい時代を生き抜くにはそうした学力が必要だ、という考え方は間違っていない。問題は、その目標が達成されたかどうかである。

社説[中教審]地方は『根本論議』の席につけ(読売 2005.2.17)
今期の中教審には、「ゆとり教育」を掲げた学習指導要領の見直しという重要な課題もある。「総合学習」のあり方、土曜日や長期休業日の取り扱いを検討し授業時数を見直すこと、国語や理数教育を充実改善することなどが柱だ。
これらについても秋までに結論を出したい、としている。だが、ほとんどが国と地方の役割分担の論議と密接に絡むテーマだ。特別部会での根本論議が進まないと、国としてどんな教育政策を決められるのか、決めた政策に実効性があるのか、が見えてこない。

クローズアップ2005:中教審総会 指導要領、俎上に(毎日 2005.2.16)
3期目となる中教審の鳥居泰彦会長は15日の就任会見で、学力低下傾向や指導要領見直しの必要性を認め、「改めるべきところはできるだけ早いほうがいい。時代の変化も早い」と述べた。
ただし、その鳥居会長も一方で「総合学習学力低下を直ちに結びつけることは早計に過ぎる。学力低下はもっと長い時間をかけて起こったことだ」との認識を示した。基礎学力と並んで文科省が重視してきた「生きる力」に通じるPISA型学力でトップグループを維持するフィンランドで、授業時間数は日本と同じ程度で国際的には少ない部類に入る。導入から1年足らずで行われた二つの国際調査の結果を総合学習に求めることには疑問の声も根強い。