自民改憲試案:「参拝は伝統」意見を反映 政教分離緩和(毎日新聞 2005.3.7)
 
自民党憲法起草委員会が、新憲法草案試案で現行憲法政教分離規定を緩和する方針を固めたのは、首相の靖国神社参拝など神式行事が日本の伝統だとする党内世論を反映させたものだ。改憲論議を機に、党内は「日本らしさの復活」のための宗教容認論も強まっているが、なにをもって伝統ととらえるのかがあいまいで、政治による拡大解釈の恐れもはらんでいる。

政教分離をめぐる訴訟での判断基準には、77年の津地鎮祭訴訟最高裁判決で示された「目的・効果基準」がある。目的に宗教的意義があり、効果が宗教への援助や圧迫となる行為を宗教的活動と位置づけたものだ。
政府もこの基準を踏まえ、85年の中曽根康弘首相(当時)の靖国神社公式参拝官房長官談話を発表。「戦没者の追悼と世界平和への決意」を目的に、「靖国神社を援助しないよう十分配慮する」ことから「社会通念上、宗教的活動に該当しない」との見解を示している。
しかし、86年からは中国などに配慮して公式での参拝は休止状態。小泉純一郎首相も就任以来、公私の区別を明確にせず参拝を続けている。一方、公金からの玉ぐし料支出などを含め、政教分離をめぐる訴訟は後を絶たず、04年には目的・効果基準に照らし小泉首相靖国参拝違憲だとした判決(福岡地裁)も出た。

こうした状況に、自民党内は「敗戦によってすべてリセットされ、日本の伝統的行事まで政教分離というのはおかしい」との不満が強い。改憲を機に「社会的儀礼や習俗的行事」を憲法上の宗教的活動から除外し、一連の憲法問題にけりをつけたいとの考えだ。しかし、社会的儀礼と宗教的活動をどう線引きするのかは依然として不透明。厳密な現行の政教分離規定を崩せば解釈の幅がより大きくなり、政治による恣意的な解釈の危険もはらむ。【宮下正己】

 
http://d.hatena.ne.jp/arcturus/20040407