触法心神喪失者医療観察法

 

医療観察法、異例の施行前改正へ 病棟建設地で反対強く朝日新聞 2005.3.27)
 
これまで、国立7ヵ所で厚労省や市町村、病院が地元住民向けに説明会を90回以上開いてきたが、「危険だ」「逃げたらどうする」「地価が下がる」などの反対が相次ぎ、各地で交渉が暗礁に乗り上げている。
新病棟建設が着工できたのは国立精神・神経センター武蔵病院(東京都小平市)など3ヵ所(計99床)だけ。
都道府県立病院で新病棟開設の内諾を得た1ヵ所も、受け入れは早くて07年以降。施行期限時に受け入れ可能なのは武蔵、花巻の2病院の66床で、年末には病床が不足し始めるとみられる。

 

東尾張病院で開かれた説明会朝日新聞近郊知多版、尾張近郊版、名古屋版 2004.11.2)
 
殺人など重大な犯罪行為を行いながら心神喪失を理由に刑事責任を問われなかった精神障害者の入院治療病棟を、名古屋市守山区根の国立病院機構・東尾張病院に増設する計画に対し、住民の反対運動が広がっている。情報提供に消極的だった厚生労働省や市への不信感が反発の根底にあり、このままでは仮に完成しても、患者の社会復帰を目指す施設本来の役割が揺らぎかねない。 (西本秀)

名古屋市の東尾張病院 背景に説明不足
「何かトラブルがあってからじゃ遅い」「どうして区民全体に伝えなかったのか」──。
10月30日、病院内で厚労省が開いた説明会は、立ち見も含め200人を超す住民であふれた。
住民の発言は反対一色。質疑は2時間半に及んだ。
住民の不満は、大きく二つある。患者が周辺住民に危険を及ぼすのではという不安と、国・市が計画を広く周知しなかった点だ。新病棟は、昨年成立した「心神喪失医療観察法」に基づき、同省が全国に24カ所指定する入院施設の一つ。これまで7候補地を決め、東海地方では精神科専門の同病院が選ばれた。同法が施行される来年中に30床の新病棟を建てる計画だ。会場で説明した同省医療観察法医療体制整備推進室の平田強室長は、施設を高さ3メートルの塀で取り囲み、患者とスタッフの数が1対1の態勢で運営する点を強調。「これまでも同様の患者が病院に入院してきた。新病棟は今より厳重になる」と理解を求めた。
説明会は6、7月に続き3度目。この間、国と市は、日程の案内を市報には掲載せず、病院周辺の自治会にしか伝えなかった。患者団体などからは「隔離と差別を招く」と批判が出ている制度だけに、「説明会を論争の場にしたくなかった」(市障害福祉課)という。

だが今回、地域を越え、隣接する尾張旭市などからも1万7千人を超える反対署名が集まった。病院から1・5キロの場所に住む自営業の女性(45)は、反対運動の立て看板とチラシを9月に見て、初めて計画を知った。「隠しておいて、協力を求めるなんて本末転倒」。情報不足の結果、口コミが不安と反発を拡大させている。
新法は、第1条で目的を「(患者の)社会復帰を促進すること」と位置づける。国は病院と地域との連携をはかるため、住民参加の連絡会の設置も提案した。だが、不安が先立つ住民からは「施設を造るなら、人の住んでないところに」という意見まで出た。
新施設の運営には、精神障害者に対する住民の理解と不安の解消が不可欠だ。説明会の最後、平田室長は「重要な施設。皆さんが納得するまで何度でも足を運びます」と話した。
 
心神喪失医療観察法
心神喪失で不起訴や無罪などになった場合、検察官の申し立てを受け、裁判官と精神科医が合議し、治療のために入院・通院措置などを決定できる。入院施設のほか通院施設も全国に200カ所以上指定する。入院期間は1年半、通院は3年の見通し。
7候補地すべてに住民の反対があり、病棟建設の入札が行われたのは東京都の国立精神・神経センター 武蔵病院のみ。

 
 
心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律