性教育をめぐる裁判


 
http://d.hatena.ne.jp/arcturus/20031127#p1

性教育:教材返還求め都教委を提訴へ 養護学校の教員ら毎日新聞 2005.5.11)
 
東京都立七生養護学校(日野市)が独自に実施していた性教育について、都教育委員会が「不適切だ」と教材を没収し、教員を処分したのは不当として、処分を受けた教員らが12日、教材の返還と損害賠償を求め、東京地裁に提訴する。教員らは「教育内容への介入は教育基本法10条に反し、処分も行政裁量を逸脱するものだ」と主張している。
同校独自の性教育は、約半数の生徒が暮らす併設施設で99年、園生同士の性的な問題行動が起きたことを機に始まった。「問題が再発しないよう具体的で分かりやすい内容にしよう」と教員や保護者が共同で研究を重ね、教材の一部は手作りした。男女の体の違いなどを教えるため、性器の付いた人形を使ったり、頭から足、性器も含めて、体の部位を示しながら「からだうた」を歌わせたりする内容だった。
これに対し、都教委は03年7月、教材を没収し、同年9月に「学習指導要領に沿っておらず不適切」として教職員13人を厳重注意処分にした。
このため04年1月、保護者や支援者8000人余が東京弁護士会に人権救済の申し立てを行い、同弁護士会は今年1月、処分の撤回や性教育を以前の状態に戻すよう都教委に警告している。
教員とともに訴訟に加わる卒業生の保護者(55)は「知的障害児を性の被害者や加害者にしないためには具体的な教え方が必要で、ようやくそのために学べる場ができたとうれしかった。先生方と保護者で手探りで作り上げてきた授業を奪われ、現場は困っている。早く元に戻してほしい」と訴えている。

 

障害児の性 どう教えるか、学校切実(毎日新聞 2005.5.9)
 
同校の性教育は、生徒の約半数が暮らす併設の施設で、園生同士の性的いたずらが発覚したのを機に97年ごろから始まった。小学部で年間約2〜8時間、中学部約5〜10時間、高等部約10時間。就労予定の生徒などを主な対象に、避妊や性行為についても教えた。授業は障害の程度ごとにグループ分けされた。重度グループだった女性の長男は、体を清潔にしたり、こわばりをほぐす内容が多かった。授業の前に家庭に内容を通知し、事後には授業中の子供の様子を記したプリントも配られた。
女性は「体をどう大事に清潔にするか、親では甘えがちでも、仲間と共に学校の先生に学べば身につきやすい。息子は赤ちゃん人形を授業で抱いた後、小さい子を見る目もやさしくなった。体の部位なども『あそこ』では分からず、教材は必要だったと思う」と話す。同校の元教諭は「知的障害児の多くは抽象的なことは分かりづらく、歌や教材は具体的なイメージを持つため不可欠だった。体の大切さや命のつながりを学んでもらおうとした」と言う。
知的障害者や家族で作る「全日本手をつなぐ育成会」(東京都港区)は今年2月、男女の体の違いや妊娠、出産の仕組みなどをイラスト入りで解説したハンドブック=写真=を出した。
松友了常務理事は「知的障害者が自分の性の変化を受け入れたり、性衝動を自分でコントロールするため、どんな工夫や支援ができるかは、科学的に議論すべきだ。特定の考えで一切だめとか、よいとすべきものでない。分かりやすい基礎資料は必要」と話す。
冒頭の児童寮の中里さんも監修者の一人だ。「情報が入りにくく、仲間との共有体験も乏しくなりがちで、コンビニの雑誌やテレビから偏った刺激だけ入ることもある。だからこそきちんと伝える必要がある。地道に、どう手助けできるか、考え続けたい」