迷路

 

水俣病懇談会「制度の根本的見直しを」(熊本日日新聞 2005.9.7)
 
環境相の私的懇談会「水俣病問題に係る懇談会」(有馬朗人座長)は六日、東京・霞が関環境省で第四回会合を開いた。水俣病の病像とそのとらえ方に連動した複雑な救済制度に対して、複数の委員が「行政が迷路に入って複雑怪奇になった」などと批判。最新の病像を整理し、現行の水俣病認定基準や救済制度を根本的に見直すべきだという提言が相次いだ。
救済制度は現時点で、(1)公害健康被害補償法に基づく「法制度救済」(2)一九九五(平成七)年の政府解決策に基づく「政治救済」(3)判決賠償金による「司法救済」(4)水俣病新対策による「行政救済」―がある。同省が各制度がつくられた背景などを含め説明した。
これに対し、亀山継夫委員が「原因企業チッソに対応させ、国は責任を負わないという前提があった。しかし、最高裁判決で国の責任が認められ、その前提が崩れた」と指摘、「根本的に考え直さないといけない」と提言した。柳田邦男委員は「疑わしきは救済するという考えであれば、もっと違う展開があったと思う」と述べた。
吉井正澄委員も、現行の水俣病認定基準について「環境省は、九一年に中央公害対策審議会が妥当と追認したことを根拠にしているが、十四年前の答申。説得力に欠ける。病状に関する新たな知見を検討し、新たな根拠をしっかりつくる必要がある」と主張した。
病像については、同省が七四年の学術資料を基に説明。委員から「三十年前の知見で説明するのはおかしい。医学的に現時点での知見がどうなのか整理すべきだ」「この懇談会の下に専門家会議を設け議論してもらいたい」との意見が上がった。

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認定申請 県内で2000人突破 未処分者の滞留が深刻化(熊本日日新聞 2005.9.6)

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判決後の熊本県内の申請者、2004人。初申請は1822人。

最高裁判決後も、元原告から再申請や提訴を求める声は上がっていない。政府解決策の枠組みを崩せば、再び地元は混乱するだろう。認定患者や総合対策医療事業の対象者が、生涯安心して療養できる環境を整えてほしい。
http://d.hatena.ne.jp/arcturus/20050122

医療費が全額支給されることは決まっているし、基準が見直されなければ認定されることはたぶんむずかしい。
なのに保健手帳対象の116人の申請は、なにを求めてのことかな…
 

不知火患者会 国などへ損害賠償請求 年内にも提訴へ( 2005.8.29)
 

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集会には会員の患者認定申請者ら約四百五十人が出席し、大石会長が「国の新たな水俣病対策は我々を患者と認めず、押さえ込もうとしているだけ。我々が患者として正当な救済を受けるための道は裁判しかない」と提訴の方針を会員に向けて表明。園田弁護士も「行政相手の裁判は厳しく、越えなければならない壁は多いが、正しい選択だ。力を合わせ、勝利の日まで共に闘おう」と応じた。
最後に(1)すべての患者の救済(2)患者に対する同一の補償―などを国、県、チッソに求める集会スローガンを掲げ、救済の実現まで団結して闘い抜くことを確認した。(並松昭光)

いままで声を上げられなかった…
もし認定を求めての提訴が続けば、「それでも今度こそ」「これが最後」そんな想いと行政は
争う覚悟ってあるのかな。
 
 

衆議院環境委員会(2004.11.26)
 

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滝澤環境省総合環境政策局環境保健部長
今御指摘がありました大阪高裁での判決の内容でございますが、五十二年判断条件につきましては、端的に言って、救済法あるいは補償法における認定要件を設定したものと理解するべきであろうという、これは一部でございますが、そういう表現が判決の中に出てまいりまして、個々の事案に対しましてはこの判断条件とは別個に損害賠償請求事件として損害賠償の判断準拠を設け、それで大阪の二審の判決がなされたというふうに私ども思っております。それを今回の最高裁は踏襲したわけでございますので、今御指摘のような五十二年判断条件が否定されたというふうには私どもは考えておりません。
 
松野(信)委員
ちょっと時間がありませんので、この点については延々と議論したいところですけれども、ただ、この点だけは指摘したいと思います。
公健法の判断基準として正しいんだ、国の方はそうおっしゃっている。しかし公健法というものは、本来の法の趣旨としては広く薄く、かつ早く被害者を救済しよう、本来はこういう考え方に立っているわけです。それで、公健法の補償だけではどうしても広く薄くということですので、自分はそれは不満だ、自分はもっと被害を受けているという人は、公健法上認定されて自分の被害をもっと甚大だという方は、それは裁判を起こしてより多い補償を受け取る、本来はそういうふうになっている仕組みなんです。
ところが、実際は全く逆になっていて、公健法の認定というのは昭和五十二年の判断条件でぎゅっと狭く、極めて厳格にしか救済しない、そうすると、それに漏れる人が次から次に出るものですから、この一覧表にあるように次から次に裁判をせざるを得ないという、まさに逆立ちした状態になっている。大臣、これはそういうことになっているということをぜひ御認識いただきたい、こういうふうに思います。
それから、認定基準の問題でいいますと、繰り返し繰り返し国が言っていましたのは、司法の、つまり裁判所が採用する認定の基準と行政が採用する認定の基準はある意味では違っていいんだ、二重の基準があっていいんだ、こういうことを言ってこられたわけです。しかし、少なくとも司法の最も最高権威の最高裁判所まで出て、つまり、行政認定で棄却された人が最高裁で救済されている、あるいはそのもっと前でもたくさん救済されているというこのおかしな仕組みというものは、司法の基準の方が本来は優先しなきゃいけない、ところが行政の基準の方が事実上は優先してしまうということで、どうも法の支配をある意味では無視するような、最高裁判所が何と言おうとおれたちはおれたちの基準でやるんだ、こういうふうな行政の暴挙と言ってもおかしくないように私は思いますが、大臣、率直にどうですか。
 
小池環境大臣
二重の基準ということでお話ございましたが、先ほど部長の方からもお話しさせていただきましたように、私どもの受けとめ方といたしまして、五十二年の判断条件は否定されていないということと、それに従いまして、公健法の認定基準を見直すための例えば検討会などを設けるというようなことについても、要は考えていないところでございます。
ただ、御指摘のように、最高裁の判決で問われた責任の意味ということをよりしっかりと受けとめるということも踏まえまして、先ほどから申し上げておりますように、法律などの専門家の方々から成る検討の場を設けていきたい、このように考えているところでございます。
 
松野(信)委員
ぜひ検討の場でしっかり前向きの議論をしていただきたいというふうに思います。
比較を申し上げると、ハンセン病というこれまた大変な被害を生んだ事件がありました。これも熊本地裁で判決がありました。小泉さんが、これは私は立派だったと思うんですが、控訴を断念するということで確定したわけです。
ですから、一方は、ハンセン病の方は熊本地裁の判決が確定をした、水俣病の方は最後まで争って最高裁判所で確定した。いずれにしろ確定したには違いないんですが、ハンセン病の方は、厚生労働省の方が、判決確定後、追加提訴してきた人たちと次々に和解をするということで、解決に向かってある意味では着実に進んでいる。それに比べると環境省の方は、この水俣病の問題について、先ほど来から昭和五十二年の判断条件は正しいんだ正しいんだということを言うばかりで、全然、解決に向けて、あるいはこの最高裁の判決を受けて真摯に進めようという姿勢がどうも見られないというふうに言わざるを得ないので、検討するのは結構ですけれども、ぜひ本当の意味での真摯に前向きな検討をお願いしたいというふうに思っております。

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衆議院環境委員会(2005.2.23)
 

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川内委員
第一問目で、国は不法行為の責任があるとお認めになられました。損害賠償の責任については、原告の損害賠償を認められた方たちにのみの損害賠償の責任であるが、水俣病の被害の拡大を防げなかったことに関して不法行為の責任があるとお認めになられた。
私は、第二問目として、公健法は国の不法行為を前提としていますかと。それに対しては、不法行為を前提としてはいないが公健法に矛盾するものではないという御答弁であったと思います。前提としてはいないが矛盾はしていない、公健法に矛盾はしていないと。これは私はどうにも理解ができないんですが、不法行為を前提としていない法律、不法行為があった国と公健法との関係。
そうすると、お聞きすると、大臣は、いや、チッソが一〇〇%悪いんだと。国も県も四分の一チッソにかぶさって責任があると最高裁に言われているんだから、国、県の責任はないと。不法行為の責任はないとあたかも言うかのような御答弁を今されたんですが、責任はあったと冒頭言われたわけですから、公健法と今回の最高裁の判決の関係というのは明らかに矛盾すると私は思いますよ。そう思いませんか、大臣。もう一度答弁してみてください。
 
小池環境大臣
よくお聞きいただければと思うんですけれども、今回の最高裁の判決は、国と熊本県に対して賠償責任がある、そして、その中身は、賠償総額の四分の一を限度としてチッソと連帯しての賠償責任であるということでございます。
チッソが一〇〇%、そして、それにかぶさって四分の一、四分の一という御指摘でございますが、そのとおりでございまして、チッソの賠償責任という観点から、チッソが賠償額全体について支払い義務を負うというものでありまして、原因企業の負担で補償給付を行うというふうにしておりますのはこれは公健法でございますけれども、このような最高裁判決の趣旨と矛盾するというものではございません。
よって、今回の最高裁判決で公健法の前提が崩れたとは考えていないということでございまして、おわかりいただけましたか。

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衆議院 予算委員会第六分科会(2005.2.28)
 
小池環境大臣
特に公健法の第二種地域のことについておっしゃっているんだろうと思いますけれども、この地域に係る水俣病などの疾病については、今御指摘もあったかと思いますが、公健法の枠組みとは別に、患者団体さんとそれから汚染原因企業との間での補償協定が結ばれているということでございます。
補償協定書というのがございますけれども、これは公健法に基づく認定患者については、その希望で、公健法に基づいての補償と、それからこの補償協定に基づいた汚染原因企業による直接補償のいずれかを選択できるようになっているわけでございます。つまり、民民であるということでございます。
水俣病に関しては、これまですべての認定患者が補償協定による補償を選択されてこられました。この理由とすれば、補償協定の方が公健法と比べて補償内容が手厚いということでこちらをお選びになった、つまり、一時金があるかないかということは大きな分かれ道になったというふうに承知をいたしております。
補償協定ではなくて公健法の枠組みで補償がなされるようにするというためには、この補償協定の改正とか廃止が必要になってくると考えられるわけですけれども、これは、あくまでも補償協定は原因企業と患者団体との間の契約でございますので、そこに逆に行政として介入するということが、いいのか悪いかは別にしても、まずは難しいのではないか、困難ではないか、このように思っております。
 
松野(信)分科員
チッソと患者団体との補償協定というのは、確かに今大臣が言われるように民民の問題ですから、これに行政が介入してどうだこうだというのは、これは現実にはなかなか難しい問題だろう、その点については私もそのように思います。しかし、まず根本の問題として、公健法が使われない、せっかくこれは、かなり昭和四十八年当時相当の審議をして、議論してでき上がった法律なんですけれども、使われていないということは、本当に私は率直に言ってもったいないという気がします。
それと、もう一つ、今お認めいただきましたように、この公健法というのは、本来は民事責任を踏まえたところの仕組みになっている、こういうことです。行政上の単なる公的な行政補償とか救済とか、そういうわけじゃないわけで、あくまで民事責任を踏まえた制度になっているわけです。ところが、現実には、公健法上は民事責任を踏まえたと言いながら、次々に棄却されている。患者さんが認定申請をしても棄却されている。それではということで、患者さんの方が公健法をあきらめて次々に裁判を起こさざるを得ない。そうすると、裁判では全体としては次々に認定がなされ、一定の賠償が認められる。こういう図式が残念ながら今現在でき上がって、最終的には最高裁まで行っている、こういうことです。
そういう現実だとするならば、公健法というのは本来民事責任を前提とするというふうに言いながら、現実にはそれになっていない、結局、裁判まで起こさないと救済されない、損害賠償が請求できない、こういうようなのが今の現状であります。
これでは、私は、この公健法が本来民事責任を前提にしたというような本来の仕組みからかなりかけ離れたものになってしまっているのではないかと思いますが、この点についても率直に御意見をいただきたいと思います。

参議院予算委員会(2005.3.14)
 

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小池環境大臣
それでは、まとめてお答えさせていただきます。
まず、昨年十月に最高裁判決が出たわけでございます。そしてまた、平成十三年に大阪の高裁判決が出ております。こちらのその最高裁の判決では、五十二年判断条件は公害健康被害補償法の水俣病認定要件として、これとは別個に判断状況を示してメチル水銀中毒症としての損害を認容したということでございまして、このことが踏襲されているわけでございます。よって、今回の判決で公健法の認定基準としての五十二年判断条件が否定されたものというものではございませんで、この判断条件の見直しについては、その必要があると私どもは考えていないところでございます。
そしてまた、総合対策医療事業でございますけれども、こちらの方での病像論ではございますけれども、公健法による認定制度とはまた別に、環境保健行政の推進という観点から、一定の基準に基づいて救済を行ってまいったのは先生もよく御承知のことだと思います。
ということで、原告それぞれの病像に係ります個別の判断準拠に基づいてなされました裁判の確定判決とは、結果としてそれぞれの判断基準の間に内容的に差が生じるといたしましても、それぞれ併存し得るものというふうに考えているのが私どものスタンスでございます。
それから、今後のすべての被害者を救済するための特別立法の在り方、そして今後の協議の進め方の基本的スタンスでございますけれども、まず環境省といたしまして、今後の水俣病対策のアウトラインといたしまして、判決確定原告に対する医療費の支給、それから総合医療対策事業の改善、水俣病発生地域の再生・融和の促進、これを内容といたしました対策案をお示しを、それぞれ各党の小委員会などをお開きいただいているそういう場におきまして、こういった考え方についてお示しをさせていただいたところでございます。
それから、今回の最高裁判決で、先ほども申し上げましたけれども、公健法に基づきます認定制度そのものが否定されたものではないということで、引き続きまして公健法そして平成七年の政治解決の枠組みを尊重していくことが重要だと考えております。
これは、様々な患者団体の皆様方とも対話を重ねさせていただいて、そういったところからも参考にさせていただいて、先ほど冒頭に申し上げました、この二番目の問題の冒頭に申し上げさせていただきました環境省といたしましてのアウトラインを示させていただいているわけでございます。で、このアウトラインを基本といたしまして、引き続き精力的に熊本県、そして今おっしゃいました鹿児島、そして先生のお地元の新潟、こういった各自治体との協議も進めまして、できるだけ早急に対策を取りまとめるように努力していきたい、これが私どもの基本的なスタンスでございます。
また、特別立法を作るべきではないかという御質問でございましたけれども、国といたしまして、公健法そして政治解決の枠組みを尊重していく、また何よりも、何と申しましょうか、もやい直しというそこの点なども非常に重要なところではないかと考えておりまして、そういった観点からも、私どもは特別立法の必要は感じていないということでございます。

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「民民に行政は介入できない」というけれども、行政の認定が、加害企業と被害者の協定に縛られて
軽症者は認定できないというのも納得できない。補償協定も見直せばいいじゃないですか…
 

77年に示された公害健康被害補償法(公健法)上の判断条件にこだわらず、すべての被害者を水俣病と認め、謝罪してほしい。判断条件にのっとった従来の水俣病の補償金が、症状に応じてランク(A=1800万円、B=1700万円、C=1600万円)付けされているように、95年の政府解決策を踏まえて交付された一時金(260万円)と医療手帳の所持者を仮にD、保健手帳所持者をEなどと位置づけ、メチル水銀暴露による健康被害を訴えるすべての人たちを、新たな特別立法の下で水俣病と認めるべきだ。
http://d.hatena.ne.jp/arcturus/20050122

「生きているうちに救済を」という選択の重さを否定したいのじゃあない。
それでも、「長年自分を苦しめてきた病は何なのか。それをはっきりさせたい」そのためには、私は
認定基準の見直しは必要だと思います。それは、けして水俣病患者のためだけではないと思います。
こんなこと言うの、とても心苦しいです。ごめんなさい。
 
 

中央公害対策審議会で、井形氏らはつねに環境庁や大蔵省の立場に配慮した発言を繰り返している。これはこれで学者たちのサービスなのかもしれないが、環境庁がそれらを現実の政策としてしまっており、このことが問題なのである。何かと批判の多い環境庁による過去の公害行政は、環境庁が源なのか、それとも井形氏らのように環境庁の立場に配慮して先取りした発言が源なのかについては、今後詳しく分析する必要がある。卵が先か鶏が先かというような詮索かもしれないが、データに基づく医学的議論という原則から離れて、何の根拠もない議論が政策としてなぜ一人歩きをしたのかということを検証することは、今後のわが国の環境行政や保健医療行政のために非常に重要だと思う。
『医学者は公害事件で何をしてきたのか ISBN:4000221418

「なんだ、みんなグルか」というのが、水俣病に関する研究費の支給状況を記載した資料とこれらの記事を見たときの私の正直なつぶやきである。被告である国・環境庁から研究費をもらい、水俣病問題の法的問題に関してコメントを書き、国が有利になるように話を進める。これが事実に基づいているならまだしも、全く事実と反する方向に話を進めていたのである。おまけに、これらの論文には、国・環境庁からの研究費を受給していることは、一切書かれていない。
『医学者は公害事件で何をしてきたのか ISBN:4000221418

中立の判断がしてもらえる場は、法廷しかないのかな。ぜつぼー的な気持ちになっちゃうな…
うー、private act て、なんだろ??