「被害者が新保健手帳にはっきりとノーを突き付けているということ」

 

小池環境相 「和解の考えない」 第3次小泉内閣就任会見で(熊本日日新聞 2005.11.1)
第三次小泉改造内閣で留任した小池百合子環境相北側一雄国交相は三十一日夜、それぞれ就任会見し、水俣病問題や川辺川ダム建設について現行の方針を堅持する姿勢を重ねて表明した。

全国知事会議 潮谷知事、政府一丸の対応要望(熊本日日新聞 2005.11.12)
潮谷義子知事は十一日、東京・永田町の首相官邸であった政府主催の全国都道府県知事会議で、小泉純一郎首相に対し、来年五月に公式確認から五十年を迎える水俣病について「政府一丸となった対応をお願いしたい」と要望した。
潮谷知事は、昨年十月の水俣病関西訴訟最高裁判決で国と熊本県の責任が認められたことを指摘し、「公式確認五十年を前に、熊本と鹿児島の水俣病認定申請者は三千人を超え、両県の認定審査会は事実上機能していない状態が続いている。切羽詰まった状況だ」と説明した。その上で、「水俣病は公害の原点。一地域の問題ではなく、国にとっても重要な課題だ」と強調し、環境省だけでなく財務省など関係省庁も含めた政府の積極対応を求めた。これに対し、小泉首相水俣病に言及することはなかった。
会議終了後、潮谷知事は「首相にはせめて日本全体の問題だという認識を聞きたかった」と話した。

 

不知火患者会 第2陣504人が追加提訴 熊本地裁(熊本日日新聞 2005.11.15)
水俣病不知火患者会」(大石利生会長、約千三百人)の患者認定申請者が国と熊本県、原因企業チッソに損害賠償を求めた訴訟で、天草郡御所浦町水俣市、鹿児島県出水市などに住む第二陣五百四人が十四日、一人当たり八百五十万円、総額四十二億八千四百万円を求め熊本地裁に追加提訴した。十月三日提訴の第一陣五十人と合わせ、原告数五百五十四人のマンモス訴訟に発展した。
同訴訟弁護団によると、十二月十九日には県外転出者ら第三陣数百人が提訴する予定で、最終的な原告数は千人規模に達する見通し。原告らは裁判所に、関西訴訟最高裁判決をベースにした早期の被害者救済を図るよう働き掛ける方針で、三年以内の「司法救済制度」確立を目指す。第一回口頭弁論は同月二十六日。
十四日提訴したのは三十代十人を含む九十代までの男女で平均年齢は五十七歳。国と県は一九六〇(昭和三十五)年以降、水質二法(水質保全法、工場排水規制法)などに基づきチッソ水俣工場の廃水を規制する義務を怠り、水俣病被害を発生・拡大させたと主張。チッソは有害な廃水を放流し、住民の安全確保を怠ったとして損害賠償を求めている。同訴訟では、第一陣の提訴後に小池百合子環境相が「主張すべきことは主張していく」と争う姿勢を示している。
水俣病をめぐっては、被害を拡大させた国と県の責任を認めた関西訴訟最高裁判決後の認定申請者が熊本、鹿児島両県で三千三百人に迫る。しかし、患者かどうかを判断する両県の認定審査会は機能停止状態。十月には国の新対策として医療費の自己負担分を全額支給する新保健手帳の申請受け付けが始まったが、認定申請者の同手帳申請は少なく、司法救済を探る動きが強まっている。

水俣病:賠償訴訟2次提訴 被害広く、訴え深刻「水俣病なければ…」/熊本(毎日新聞 2005.11.15)
チッソは68年にメチル水銀の生成を伴うアセトアルデヒドの製造をやめた。しかし、第2陣には70年生まれの35歳を最年少に30、40代も目立ち、被害の広さ、根深さを浮き彫りにしている。男性は「私たちのようにいまだに悩み、苦しんでいる人は多い。まだ先の長い息子のことを考えると新保健手帳の医療費助成だけではだめ。補償金がほしい。国はあまりに冷たすぎる」と訴えた。

 
司法救済しかないのかな、3000人以上が認定申請しているのに…
審査会を開くこともできないでいて
「安心して暮らせるよう打ち出した新対策の意味をしっかり」訴えるなんてできないと思います。

第4回水俣病問題に係る懇談会会議録(2005.9.6)

今の段階であまり断定的なことは言いたくないんですが、今までのとりあえずのところでの感想ということで申し上げますと、現在の救済のいろいろなあり方、といっても先ほどご発言があったように奇々怪々で全くわからない。しかし、そのわからない理由は、一つには何といってもこの問題をチッソという一企業に対応させるという大前提と言いますか、そういうものでやってきたということがあるということは否めないのではないかと思います。そのことは何を意味するかというと、国がこの問題で責任を負わないよということをこれまた大前提として、そのためにこういういろいろなことが起こっている。
先ほど43年までの不作為あるいは懈怠ということがありましたが、確かにやるべきことがちっともなされていない、根にはそういうあれがあるのではなかろうか。そのことを前提としますと、法による補償という道が選ばれたのも、そして、その補償について審査をある程度厳しくしたということもある程度の合理性がある。これは当然合理性があります、一応国に責任がないという前提の下で被害者を救おうというんですから。国民の税金をむやみやたらに使っていいかという問題が当然出てきますから、ある程度厳しくするのはこれまた当然だと思います。
ところが、それと政治救済というのが絡まって、さらに今度は最高裁の判決が出て、国が責任があるということが認められる事態になった。そうすると、今までの大前提がここで崩れたと言わざるを得ないんですね。この崩れたことを今度は前提として、それではどういう解決をしたらいいかということを根本的考え直すべきだろうと思うんです。そうしないと、今までの司法救済と、そのほかにこれを繕うための救済ということを考えざるを得なくなって、ますます奇々怪々になる。
私は、従来の認定の審査基準、公健法等を改正しろとか、そういうことはあまり意味がないのではなかろうかと。今までの時点で考え得るある一つの合理的な施策であって。その施策が成功したかどうかという評価は別として、一応の合理性の認められる施策だったろうと思うんですが、現在はその前提が大分違ってきているわけですから、その大前提をもとにしてこれからどうあるべきかということを考え直すべきではなかろうかというのがとりあえずの感想です。(亀山委員)

この議事録を読んでると、中公審 水俣病問題専門委員会(1991)から、なにも変わっていない気がします。
 http://d.hatena.ne.jp/arcturus/20050415
最高裁判決は、なんだったんだろ…
その重さに、行政だけが向き合わないでいるようにみえます。

遅きに失するとはいえ、行政がこれまでの失政をつぐなうことのできる、おそらく最後の機会が来たのです。この時を逃すなら水俣病の教訓を発信するなどという言葉は二度と使えなくなります。最高裁は実にすばらしいチャンスを与えてくれました。あるべき行政の姿をめざし一歩を踏み出してください。

要求書(2004.11.30)

 
 

関西訴訟勝訴原告 環境省に早期認定など要請(熊本日日新聞 2005.11.12)
水俣病関西訴訟の最高裁判決で勝訴した原告の坂本美代子さん(70)=大阪市=と、遺族原告の小笹恵さん(52)=大阪府松原市=が十一日、環境省を訪れ、公害健康被害補償法(公健法)に基づき早期に水俣病と認定することなどを要請した。
坂本さんは、一九七八(昭和五十三)年に熊本県に認定申請したが、現在まで結論が出ず処分保留中で、「水俣病と認めてほしくて二十二年間裁判を闘ってきた。認定申請してからも二十八年になるが、ずっとほったらかし。国は私が死ぬのを待っているのか。もう耐えられない」と訴えた。
小笹さんも、六月に初申請した自身の水俣病認定のほか、死亡した両親の認定を要望した。両親は七四年、県に認定を初申請したが、母親は九三年、父親は九四年に未処分のまま死亡。両親とも最高裁判決でメチル水銀中毒と確定したが、公健法の規定により両親の認定申請は失効した。
小笹さんは「両親は水俣病だったという名誉回復をしたいだけ。非がある国が勝手につくった法律を盾に、患者をさらに足げにするのは許せない」と迫った。
これに対し、応対した滝澤秀次郎・環境保健部長らは、小笹さんの両親の認定について「気持ちは分かるが、法に反することはできない」と説明。本人二人の水俣病認定については「熊本県認定審査会の再開に一生懸命努力している」と答えた。

関西訴訟団 公式確認50年事業実行委から脱会へ(熊本日日新聞 2005.11.12)
訴訟団が提出した声明文(八日付)などによると、訴訟団は実行委主催事業として「水俣病を発生・拡大させた行政の施策を問い、メチル水銀中毒による健康被害の現状を科学的に検証する」連続講座と公開討論会の開催を提案した。しかし、事業検討部会内で「一般の参加が期待できない」など実現を疑問視する意見が出て、採用に至らなかったのが脱会の理由。

関西訴訟訴訟団「実行委員会脱会に伴う声明」(http://www1.odn.ne.jp/~aah07310/index-j.html より)
最高裁判決後の水俣病認定申請者はいまや3000名を超えています。これまで名乗り出ることができなかったこの方たちは広範囲にわたるメチル水銀汚染「地域」の「住民」です。私たちの企画における水俣病事件の関係者や専門家による議論や検討過程のすべてを、この「地域住民」の誰しもが瞬時に容易に理解していただけるとは思いません。しかしこの当事者である「地域住民」の生命・健康・救済に関わる課題に向き合うことを「メリットが少ない」「関心が薄い」「参加が期待できない」とするのは水俣病の実態から「地域住民」を引き離すものであり「一般の住民は難しいことはわからない」と決めつけていることに他なりません。「実行委員会」の関係者は私たちの企画においてむしろ「一般の方」「地域住民」が当事者として課題に向き合えるように関心を喚起していく、できるだけ理解されるように工夫をしていく、もやいの役割が求められたのではないでしょうか。

 
 

水俣病公式発見から来年で50年 進まぬダイオキシン類…/熊本(毎日新聞 2005.10.6)
チッソは異議申立書で、環境基準がなかったころに堆積した土砂について措置を受けることは「不意打ち以外の何ものでもない」と記述。さらに、「環境基準は行政目標としてもっとも厳格な安全性の基準を定めたもの。私人たる事業者が、行政が支出する分以上に負担しなければならない合理的な理由は存在しない」。除去範囲には基準以下の地点も含まれ、水俣病補償の損失を抱える中では過大な負担として「負担率は2分の1を超えることはありえない」とした。