給食

 

栄養失調児:校長見かねて、こっそり牛乳飲ます(毎日新聞 2006.5.22)
 
栄養失調が疑われる児童に、校長がこっそり牛乳を飲ませている小学校がある。校長は「家庭のしつけまで学校が引き受けるのはどうかと思うが、(劣悪な食事の)限度を超えている」と嘆く。食育基本法が昨年夏施行され、国は朝食を取らない小学生をなくそうと呼びかけるが、法の理念とかけ離れた現実に学校現場から悲鳴が上がっている。

ブックマークすごい。
「こっそり」て、小学校だからできるけれど、中学校ではたぶんむずかしい…
学校や医療関係者には通報が義務付けられていますから児相に連絡はされてるでしょう。学校には3ヶ月に1度の身体測定もありますし、「低体重」くらいの客観性もある通報ができるはずです。ですが児相も地域によってはパンク状態だそうですから、かなり緊急性の高いケースでなければなかなか動いてくれないことが多いようですし、必要と判断されて施設に保護されたとしても、その施設もまた手が足りているとはいえない状況で子どもにとってあまり良好といえない環境だったりする、らしいです。うう。
そのような施設に“保護”してお終い、と言うなら、それもまた私たちは、その子どもをネグレクトしたことになるのではないかと書かれてた精神科医もいました。十分に機能していない施設へ保護さえしてしまえば安心、でいいのかって…
すぐ生命に関わるような状態でなければ施設ではなく家庭になんとか留めようとすることが子どもにとって望ましいことであり、社会が「ネグレクト」していない状態と考えるとすれば、親に対して働きかけるよりないでしょうけれども、きっとそれはとてもむずかしい。そんなジレンマが、「家庭の機能低下」ちっくなバッシングや「愛情込めたお弁当を」とか「食育!!」とかの“教育的”なおせっかいになって出てきている部分があるのじゃないかとは思っています。
生活に余裕がない親も給食がなければ子どもの健康と発育にとってよい食生活を与えるようになるなんていうのは安易にすぎるし、経済的な問題に食育なんて意味ないのはわかったことです。親の意識だけの問題ではないし、ただ追い詰めるだけになりかねないという批判はよくわかる。
各家庭の生活に、ずかずかとデリカシーのないやり方で踏み込むわけにもいかない。
それでも、いくらなんでも栄養失調のまま、親だけでない私たちがネグレクトしたまま、子どもを放っておくことはできない…

二審も父親に懲役14年の判決 岸和田虐待事件(朝日新聞 2006.5.23)
 
大阪府岸和田市の自宅に当時中学3年の長男(17)を1年以上閉じこめ、餓死寸前に追い込んだ虐待事件で、殺人未遂罪に問われた父親の烏野康信被告(42)に対する控訴審判決が23日、大阪高裁であった。白井万久裁判長は「親としてだけでなく、人としての感情がない犯行で結果は重大かつ悲惨だ」と述べ、懲役14年(求刑懲役15年)を言い渡した一審・大阪地裁堺支部判決を支持し、被告側の控訴を棄却した。
判決によると、烏野被告は内縁の妻の川口奈津代被告(40)=大阪地裁堺支部で公判中=と共謀し、02年6月ごろから前妻との間にできた長男への虐待を本格的に開始。部屋に閉じこめて殴るけるの暴行を加えたり、食事を減らしたりする虐待を03年11月まで続けたうえ、衰弱した長男を放置して殺害しようとした。
烏野被告は控訴審で一審と同様に「長男が食事を制限され、栄養失調になったことは知らなかった」などと無罪を主張し、川口被告との共謀も否定した。
判決は「長男と同居して接していた烏野被告が衰弱について分からなかったはずはない」と指摘。03年9月中旬ごろに衰弱を認識した後も医師の治療を受けさせなかったことなどから、確定的な殺意があったと判断した。
また、烏野、川口両被告が同年10月に「学校でのいじめで拒食症になったことにしよう」と口裏合わせをしたと認定。2人の間で暗黙の共謀関係があったと判断した。

被害者側の代理人の大田口宏弁護士によると「リハビリに取り組んでいるが自分で歩けない状態。簡単なあいさつや会話は可能で、笑顔も見せるものの社会生活に復帰するのは困難」だそうです…

04年の子ども虐待死増加 0歳児が4割超す(朝日新聞 2006.3.30)
 
04年に虐待で死亡した子ども58人(53件)のうち、0歳児が4割を超え、中でも生後1カ月未満が8人に上ったことが30日、厚生労働省の検証委員会(委員長=松原康雄明治学院大教授)の報告で明らかになった。7人は妊娠の届けもなく、自宅で出産した直後、放置するなどして母親が殺害していた。報告は「望まない妊娠を防ぐと共に、妊娠期からの相談・支援態勢が必要」と指摘している。
委員会の検証は昨年に続き2回目。04年に亡くなった子どもは前年より7人多い58人で、0歳児はこのうち24人。4カ月未満が70%を占めており、前回の36%から倍増した。特に生後1カ月未満が8人と目立ち、放置や遺棄が3人、窒息が3人、2人が首を絞められて殺されていた。加害者は全員実母で10代が3人だった。8人中5人が望まない妊娠で、児童相談所や市町村など関係機関ばかりでなく、家族や学校なども妊娠を把握していない例が多く、養育の意思も自信もなく、地域で孤立し虐待に至る姿が浮かび上がっている。
一方、虐待の再発を防ぐための自治体による虐待事例の検証が行われていたのは53件中わずか24件。同省では検証のガイドラインを作成し、第三者を含めた検証委員会の設置などを自治体に促すとしている。

子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(厚労省 2006.3.30)

第11回今後の児童家庭相談体制のあり方に関する研究会議事録(2006.3.23)

後藤委員
一つ、初めから気になっているのは、一時保護所、児童養護施設にしても、担当の児童福祉司はご存じだと思いますが、センター長たちが中の子どもの実態や状態をしっかりつかんでいるのか、その辺が少し不安です。
それから、先ほどの児童福祉司の専門性についても、私が言うと愛知県と名古屋市のことになりますので、自分のところはこうだったということは言いづらい点がありますが、この際なので言います。児童福祉司は2、3年くらいで替わってしまったり、以前は土木の方をやっていて、今は児童福祉司をやっているような、よくわからないまま児童福祉司になることが今までずっとありましたので、ぜひ専門性を持ってかかわってくれる人を選んでいただきたいのが希望です。

「今後の児童家庭相談体制のあり方に関する研究会 報告書」について(厚労省 2006.4.28)





夏休みの学童保育でお弁当を持ってこない子どもがいるらしい。
その子どもは習い事もしているらしくて、とうていコンビニのおにぎりさえ買えない経済状態の家庭ではない、という。指導員が自分のお弁当をわけたりしていると言ってた。でも、もってこないのは1人じゃないという。
子どもにもたせないのだから父親も母親も昼食は摂らない家庭なんだろう、きっと。*1
ライフスタイルが多様化しているのに1食食べないことを欠食ともいえないんじゃないかな。どのような食生活が子どもにとって望ましいかを提示するのは、とてもむずかしいと思う。それぞれの家庭がよしとしていることなら、まず介入はできない。「かならずあさごはん」とか、あさごはん食べさせない延長にかならずネグレクトがあるともいえないし、ぜんぜんナンセンスだと思う。親が「これがいい」と与えてくれたものがその子にとっては、だれがなにを言おうといちばんいいもの、なんだと思う。だからよほど子どもの健康状態がわるくならなければ、親が「これがいい」としていることに文句は言いようがない。ネグレクトかもしれなくても、子どもの健康状態がはっきりわるくなるまでまつしかない…
それでしかたない、だろうか。わからない。
食べるという行為は生きるうえで大事なもの、と私は思う。
ニュートリゲノミクスもなんだかなだけれど、それぞれに習わなければいけないことはあると思ってる。





給食については、少なくとも現在実施されている地域では(夜間学校を除けば)、なくなることないと私は思ってるんだけれど。
給食費を全額負担する自治体もでてきましたし、現実的にニーズはありましょうもの。就学援助の受給者は全国で133万7000人、受給率全国平均は12.8%(2004年度)東京、大阪では25%という状況で給食を廃止すれば、学校はますますたいへんになるでしょう。*2

経済的な事情だけでなく、病棟にきょうだい児がいたり親が療養中であったりするならほんとうに給食はありがたいものです。そゆうとこにはほかにぜんぜん支援されてないのだから、給食くらいいいじゃんって思う。
ただ除去食*3や、もしこれから食に対して宗教的禁忌をもつ児童が増えていったりすれば*4そんな多様性にどのような対応ができるだろうとか思ったりも、かなり安全管理は厳しくなったものの「クレイジー*5と言われたりしてるのも知ってるけど、やっぱり必要性のほうが高いといえると思います。


栄養面での配慮も献立のバラエティもずいぶん配慮されていて、その制度のメリットが大きいとはいえ給食は、パーソナルな部分に行政が立ち入っているともいえるはずです。突き詰めていってしまえば給食自体に「大きなお世話」なところはあって、「給食におまかせ」も、ちょっとあやうい気はするんです。
このところは無理強いしないという様子ですが、それが、親からのニーズがあることを受けて、また食育の観点から、食べられない子どもに強要することが増えるのではないかという不安があります。*6
みんなと同じもの同じ量を決められた時間で食べなければいけない、をできない子どもはいるでしょう。そうできることが子どもの身体にはいいのだしバランスのいい食習慣を身につけるためにはある程度の教育的な強制も必要というのはわかる。でも、そうできなければ食べ物を残すわるい子であって、ひいては「家庭のしつけがわるい」とも言われるなら、ただただ苦痛になってしまう。学校給食には、そんな強制されやすさがあるだろうと思うのです。
食べること自体が苦痛に満ちている毎日なら、食育などになんの意味もないと思うのですよ。
以前食育について書いたもの http://d.hatena.ne.jp/arcturus/20050708
過度なダイエットなどは、食育だけで解消できるものではないのでしょうね…


学校給食を否定する人は、最近の若い母親は自己犠牲的に子どもにご飯を作っていない、という批判的な考え方がある。給食が広がると自分のように頑張っている母親が評価されなくなってしまう、という気持ちがある。

くすくす。「あなたのために」て、ぎちぎち自己犠牲では子どもが嫌がりましょうね。できないことはできないと正直に言うしかないと思います。
ハンディキャップがある子どもは、こゆうのにちょっと敏感なんですよ。

「私は給食に反対。税金の無駄遣い。親が働いているからこそ弁当を作り、子どもと接点をつくるべきだ」。弁当から格差が見え、他の子の陰口を言う子がいるなら、逆に子どもの考えを聞く機会になるという。

とっても美しいです(笑)
中学のときはお弁当だったけど、その内容であれこれ言ったりした記憶ないのです。私が気づかなかっただけかもだけど、あんまりなかったはず。
校区のなかには、いわゆる救済団地もあってデリケートな環境だったからかな、見て見ぬ振りしていなければいけない、していればいい、ポジティブで美しい思いやりで解決できることばかりではない、て中学生にもなればよくもわるくもみな知っていたのじゃないかな。そうやって狭い場所に生きてたって…
小学校は給食だったけど、牛乳と乳製品がぜんぜんだめな私にはちょっとくるしかったです。高校はお弁当を自分で作ってました、母親が弱かったので。うん、高校生は男子女子も自分で作りなさいね(笑)
忘れられないのは小学3年の遠足でクラスの男子に「おまえの弁当はいいな」と言われたこと。
2つ比べてもおんなじようなお弁当に、「おまえのは、ほんとのお母さんが作ったんだろ」て。
 
 

*1:イヤミかな(笑)他人からみて「どーみても子どもにしわ寄せがいってるだけじゃないの」に「ちがう」とすることもまた、むずかしいと思う。

*2:援助対象外家庭の給食費滞納も増えていると聞きます。このような状況で、低下しているのは「家庭の機能」や「子どもの生きる力」なのか、と思わないではいられません。ただ、経済的な理由で滞納している家庭ばかりでもないらしい、です。

*3:年間250件の事故が起きています。

*4:経済財政諮問会議は、外国人労働者受け入れ拡大策を盛り込んだ「グローバル戦略」を決めています。

*5:96年9000人以上の患者を出した集団食中毒では後遺障害が残った児童のうち21人は堺市と補償の合意ができていません。(学校給食O157集団食中毒 被害者が補償に堺市と合意朝日新聞 2006.5.1)

*6:「次世代育成コンテスト」なんて発言もありましたから(http://d.hatena.ne.jp/arcturus/20050728