診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業

arcturus2006-07-03

 
http://d.hatena.ne.jp/arcturus/20060601 の続き、メモ。
 

医療関連死調査の実施、目標の1割 22例(朝日新聞 2006.7.2)
 
しかし、調査件数が伸び悩んでいるのは、医療現場に十分周知されていないことや、いつ発生しても対応できるような解剖の態勢が十分に整わないことなどが理由だ。調査のほかに30件以上の相談があったが、遺族から解剖の同意が得られないなどの理由で見送られており、調査に結びついていない。

うまくいってないみたい…
 
 
「医療を刑法で裁くな」
私もそう言いたい。でも言いきれない。わかりません。
 

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060219#p2
 
医療とは、患者の同意の下に身体に危害を加えるという特質があります。よって、刑事罰として値するものは、故意、重過失となります。医療においては、軽いミスは必ず起こるといえます。すべてのミスが刑事事件にはなりえません。しかし、過失と重過失の選別は、それ程容易とは思えません。警察に踏み込まれたときには、単なる過失も犯罪であり、マスコミに生け贄にまつりあげられます。本来、医療への刑事罰は、故意または故意に近い重過失に限定すべきだと思います。単なる過失行為は民事訴訟行政処分の範囲に委ねるべきです。どうしても、刑事罰的な裁き方をしたいのであれば、あくまで、他の刑事罰とは分けて考え、医療過誤を裁くための法律をつくるべきだと思います。

http://d.hatena.ne.jp/taron/20060628#p2
 
ドイツでこのような制度が可能なのは、中世以来の重層的な裁判制度、村や市場の裁判所に始まり最高位に国王裁判所がある、が否定されず、ある程度温存されたのが大きいのではないか。だからこそ、このような職能的な団体が、司法の一部を保持するのに抵抗がない。通常の裁判では判断しきれない問題を、裁判所がアウトソーシングできる。
革命で王政を完全に否定し、一元的な国家を志向したフランスでは、また事情が違うと思う。
翻って、日本では、自検断という形で村落が裁判・司法機能を保持していた歴史はあるが、あくまで私的なものに終始したこと。近世の豊臣体制・幕藩体制の形成の過程で、一元的な裁判制度が構築されたことから、このような制度の構築は難しいのだろうと思う。

「確率の問題にはできない」でも裁判になれば確率の問題になってしまう…
薬害エイズはそうだったでしょ??
ヘモフォリアならしかたがなかろう、と判決はいうのだもの。
 
 
いろいろ。

医療を裁くことの難しさ(いなか小児科医)
 
さて、例えばある医療事故が起こって患者さんが亡くなられたとします。その出来事について、担当した医師に過失がありそうか?どうか?見極めて起訴するのは法曹界の『検察官』です。この検察官の方が、現在の一般的水準の『医療の知識』に照らし合わせて、『これは、どうみても医師に過失があるだろう』というものを、きちんと見極めて『この案件は起訴する』『この案件は起訴しない』としていただければ、医師も、そして患者さん側も納得できるでしょう。しかし、これまでの考察からは検察官の医療の知識については臨床医には追いつけないものと思われます。

なぜ警察ではだめなのか?(法医学者の悩み事)
 
外科学会の声明に従うのであれば、異状死届出をせず、客観的解剖がされずに、民事訴訟が先行することが理論的にありうる。福島の産婦人科医逮捕の例がその好例といえる。民事面で示談交渉などがスムーズに進行するのなら問題は発生しないかもしれないが、多くの例で、民事はもめることが多い。医療事故の民事裁判の増加は、民事で揉める例が増加してきていることを示唆している。不幸にして、示談交渉で揉めてしまった場合、遺族は、警察・検事に告発する権利がある。遺族が告発した時点で、最初の段階で、どんなに医療過誤の疑いがないと思っていても、医療事故は、医療過誤疑いの一つの事件として扱われざるを得なくなる。そのような場合で、証拠保全としての解剖が行われていないとか、カルテの改ざん、単なる秘密隠しなどが発覚すると、急に捜査が厳しくなってしまい、逮捕や起訴の可能性も増す。このように、外科学会の声明には構造的な問題があるといえるだろうし、それを指摘する医療側弁護士もいるのは事実だ。福島の産婦人科医逮捕事例においても、外科学会の声明の構造的問題に対する警告として、見せしめ的に逮捕された可能性もあるのではないか。
刑法が改正され医療過誤が免責されない限り、遺族、その他からの検察・警察への告発を防ぐことはできない。また、刑法から医療過誤が消されることはありえないだろうというのが法曹界の大方の意見である。従って、捜査サイドへの告発をなくすことは難しいといえる。
三者機関を創設した場合でも、しない場合でも、法医学会のガイドラインにのっとった幅広い概念の異状死が警察または第三者機関に届け出られるように医療側の意識改革がされ(その前提として、欧米並みの法医解剖施設が必要なことは何度も述べたが)、カルテ改竄などもされないようになれば、医師が、異状死届出義務違反に問われて逮捕されることはないだろう。つまり、本当に必要なのは、異状死届出に対する考え方をふくめた医療側の意識改革に他ならないと思われる。届出先を警察から別の第三者機関に変えられるという方策は、苦い薬をオブラートで包み、騙し騙し飲ますような、一つの方便にすぎないとも思われる。

今日は検察庁訪問!!囲碁と法律の雑記帳)
 
今回、私は医療過誤で人が死んだり、体がおかしくなれば業務上過失致死傷罪で処断されることになるが、どのような事案が起訴されどのような事案が不起訴になっているのか、と言うのを聞いてきたのだ。
医療過誤は、もともと密室的な色合いが強く、証拠不十分となると起訴は出来ない。これは当然である。怪しいから訴えるなんてマネはまずない。
証拠不十分なのに起訴して無罪判決になったら逆に国家賠償・刑事補償を請求される恐れもあるし、起訴を決めた検察官の出世コースには鉄の門が設置されてしまう。
では、証拠が十分そろっているという前提で、それでも起訴するか否かについてはどのような点が考慮されるか、と言うのが主な質問の内容である。
医療過誤だからと言うことで何か特別なスタンスがあるか、と言うと別にないという。基本的な刑事事件における考慮の内容と同じだというのだ。医療の安全性に資するか、と言うような視点は別にない、と言うことのようである。(もっとも、医療過誤専門の検察官に聞けばまたかわってくる可能性は無きにしも非ずかも)

第3回先端系法領域研究会概要(法理論を語る)
 
医療集中部ができることで、弁護士さんの目から見て何が変わったかということが議論されたのですが、やはり気になったことは裁判官が「専門化」することで、一種の「職権主義化」が進んでいるということです。ますます専門化が進む医療に対応するべく、集中部の裁判官は大変に勉強され、実際にかなりの専門知識を備えておられるようなのですが、そうした知識が当事者を圧倒してしまい、「職権主義化」が進んでしまうという問題は、「弁論主義」という民事訴訟法の建前からすれば放置できないでしょう。また、裁判官が個人的努力で専門知識をつけることは、裁判官の「私知」の利用という問題もはらんでいます。「私知」の利用は裁判所の利用者間に不平等を生じます。場合によっては、裁判所の判断がまちまちということになってしまい、司法への信頼にも影響を及ぼしかねません。生半可な知識による誤認の危険も排除できないでしょう。さらに、医療集中部が至れり尽くせりの手続を行うようになったことで、従来なら弁護士さんが「裁判では謝罪を求められない」「時間がかかる」と言って示談に誘導していた案件も、示談に持って行きにくくなったというようなことも話されていました。

んと、大阪地裁HPに医療集中部のページがあったはずなんだけど見れなくなってる??


裁判についての去年の記事。

提訴件数が1000件超/04年医療過誤訴訟、10年間で2倍増(週刊医療情報インデックス 2005年6月第1週)
 
2004年中に全国の各地方裁判所(第一審)に提訴された医療過誤訴訟は1107件で、1000件を大きく超えたことが、最高裁がまとめた「医事関係民事訴訟事件統計」で分かった。998件だった前年に比べても110件余り増加した。診療科別では、整形・形成外科が13件増加し、148件となったほか、歯科も前年の69件から83件へと増えた。審理長期化の改善傾向も続いており、平均審理期間は0.4カ月短縮した。統計によると、04年1年間の提訴件数は1107件、審理を終えた既済件数は1004件、未済件数は2138件。提訴件数は95年には488件だったが、この10年間で2.3倍に増えた。平均審理期間は、前年から0.4カ月減って27.3カ月となり、01年から4年連続で減少。平均審理期間はこの10年で11.5カ月短縮している。最高裁で01年から医学会を通じた鑑定人推薦システムを始めていることや、都市部の地裁で医療過誤訴訟の集中審理部の設置が進んでいることなどが、反映してきたものとみられる。患者側の勝訴率は前年比4.8ポイント減の39.5%となり、再び3割台に戻った。

今年の。

医療訴訟の1審平均審理期間、過去最短の26カ月台・05年(日経 2006.5.8)
 
医療ミスなど医療関係の民事訴訟のうち、昨年1年間に判決や和解で終結した1審の平均審理期間が26.8カ月だったことが8日、最高裁のまとめでわかった。最高裁が統計を取り始めた1990年の42.5カ月から15.7カ月短縮。過去最短だった一昨年より0.5カ月短くなった。
最高裁は「医療訴訟に精通した弁護士が増えているうえ、鑑定人を選ぶ際に医師らの協力を得られやすくなった結果ではないか」と分析している。
終結した訴訟は前年比4.3%増の1047件。このうち判決は392件、和解は523件だった。

 

茨城県医師会が「医療問題中立処理委員会」(日経メディカル 2006.5.22)
 
委員は、中立性を担保するため、弁護士会や地元の新聞社などに声を掛け、それらの組織に推薦してもらう形を取った。また、当初は事務局を県医師会内に置くものの、これも「本当は完全に医師会から独立したNPO(民間非営利組織)にしたかったのだが、形がない状態で寄付を集めるわけにもいかない。将来はNPOを目指すとしても、現時点では『医師会は金は出すけれど、口は出さないというスタンス』」(原中氏)だ。
医療問題中立処理委員会が立ち上がってからも、従来の医事紛争処理委員会はその業務を続けている。医療問題中立処理委員会で決着が付かず、補償でもめる場合は医事紛争処理委員会に送る一方、医事紛争処理委員会で扱われている案件でも、コミュニケーションの問題が根底にありそうな場合には医療問題中立処理委員会を紹介することが考えられるという。

 
 
気になったもの。

損害賠償、刑事訴訟で請求可能に・法務省方針(日経 2006.6.25)
 
法務省は犯罪者を裁く刑事訴訟の法廷で被害者が被った損害の賠償に関する審理を同時に進め、有罪の場合は同じ裁判官が賠償命令も出す「付帯私訴」制度を導入する方針だ。刑事訴訟と別に被害者が損害賠償を求める民事訴訟を起こさなくてはならない現行制度に比べ、迅速に結論が出るため、被害者救済に役立つと判断した。
10月にも法制審議会(法相の諮問機関)に制度創設を諮問。付帯私訴導入を盛り込んだ刑事訴訟法改正案を早ければ来年1月召集の通常国会に提出する。

どうなんだろう、よくわからない。