ALS判決:懲役3年、執行猶予5年 嘱託殺人罪を適用毎日新聞 2005.2.14)
 
ALS判決:懲役3年、執行猶予5年 嘱託殺人罪を適用
全身の筋肉が動かなくなる筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症(ALS)の長男(当時40歳)の将来を悲観し、人工呼吸器を停止させて殺害したとして、殺人罪に問われた神奈川県相模原市宮下本町、無職、菅野初子被告(60)に対する判決公判が14日、横浜地裁であった。小倉正三裁判長は「長男の日ごろの懇願を受け入れて呼吸器を停止させた」として、被告側の主張通り法定刑の軽い嘱託殺人罪を適用。懲役3年、執行猶予5年(求刑・懲役5年)を言い渡した。介護者がALS患者の呼吸器を止める行為に対し司法判断が示されたのは初めて。

判決などによると、長男は01年3月にALSと診断され、菅野被告が自宅で介護。長男は昨年4月ごろから、ひらがなの文字盤で「呼吸器を外して」「死にたい」などと懇願するようになった。菅野被告は断り続けたが「楽にしてやりたい」と昨年8月27日午前0時ごろ、呼吸器のスイッチを切って窒息死させ、手首を切って自殺を図った。
公判では、長男の同意を否定した検察側に対し被告側は「直前にも同意があった」と嘱託殺人罪を主張。小倉裁判長は▽長男は被告や医師らにも死にたいと繰り返した▽被告は悩み、自殺を決意して殺害に踏み切った−−などを総合的に判断、嘱託殺人罪の成立を認めた。「息子を自ら死に至らしめる苦悩は大きい」などと情状に言及した。

横浜地検の北村道夫・次席検事は「主張がいれられず残念。検討して対応を決めたい」とコメントした。