薬害エイズ事件で東京高裁判決 元厚生省課長、二審も有罪東京新聞 2005.3.25)
河辺裁判長は非加熱製剤の危険性を認識できた時期を一審判決と同様に「85年12月末」と判断。
二人目のミドリ十字ルートの患者が投与された時期には「安全性の高い加熱製剤が承認され、供給可能量に達していた」と加熱製剤への切り替えが可能だったと指摘した。その上で「被告は製薬会社を通じて医師に危険情報を提供し、非加熱製剤の投与を控えさせることが、患者の死亡を避けるための最後の手段で不可欠な措置だった」と述べ、刑法上の注意義務を怠ったとした。
一人目の帝京大ルートについては「患者が感染した当時は、大多数の医師が加熱製剤への転換を提唱していなかった。非加熱製剤の投与を控えさせるように方針転換するのは現実的に不可能だった」と無罪の理由を述べた。

輸入血液製剤によるHIV感染問題調査研究委員会第1次報告書(2003年)*1について、
花井十伍さん*2は、つぎのように話していました。

諸外国はHIV感染を血液事業に対する新しい感染症の挑戦と受け止め、主に議会主導で徹底的な検証作業をした。*3
「だれが悪かったか」ではなく「自分たちのシステムにどんな問題があったのか」という視点から過去を総括し、多くの国が80年代後半から血液事業の改革に着手して90年代後半までに一連の作業を終えた。ところが日本は違った。私たちは裁判で和解した後も「国が責任を持って検証してほしい」と要望してきたが、実現しなかった。このまま被害が忘れられ繰り返されるようなことがあったら、生き残った値打ちがない。そんな思いを抱いている。
公的な調査にもとづく共通認識がないから新血液法*4の議論に足かけ3年もかかった。それでも最後まで、私たち患者の意見と政府側が出してきた案との溝は埋まらなかった。過去が検証されていなければ、いざ改革するとなっても、当事者の力関係やそれまでの経緯に引きずられる。
朝日新聞 2003.11.27)


あと、ひっかかったままになってるもの。

「産官学の癒着構造という認識を1度叩き壊さないと展望が出ない」*5「感情的な、不十分な検証がまだまだ少なくない」
(第18回エイズ学会会長シンポジウムのリポート 2004.12.9)

被害者はいつか自分自身の治療のためにサリドマイドを必要とするかもしれない。*6
ランディは自分に万一その事態が起こるまで、それについて考えたくはないと言う。母親や兄弟は、もし将来サリドマイドが自分の苦しみを救ってくれることになったとしても、ゴミ箱に捨ててしまうと言ってくれた。そのことは素直に嬉しく思っている。
『神と悪魔の薬サリドマイド ISBN:4822242625

東京HIV訴訟:「提訴が4日遅い」と国などが和解拒否毎日新聞 2005.3.23)
東京HIV訴訟のうち、関東在住の被害者が和解を拒否され、通常数カ月で終了する和解協議が1年以上も止まっていることが分かった。投薬日から提訴まで20年と4日かかり、国などが「除斥期間(20年)を過ぎ、損害賠償請求権が消滅した」と主張しているためだ。しかし、最高裁は同種訴訟で20年以上経過後の請求権を認めており、学者から判例違反と批判が起きている。
国側が除斥期間を主張して和解を拒否するのは同訴訟で初。同様に潜伏期間の長い薬害肝炎訴訟などに影響する可能性もある。

これまでに各地で提訴したのは1379人。この方は原告番号574番です。

安部被告側、無罪判決求め高裁に申し立てへ毎日新聞 2005.3.25)
弁護団は「松村被告の判決で、安部被告に過失がなかったことが改めて確認された」としている。

 
 
3月、書いたのは雪の日だけみたい。今日も雪がちらちらして風が強いです。
 
 

swan_slab 『除斥期間4日遅い!うげぇ。さすが「わが国」

筑豊炭田じん肺訴訟の除斥期間の解釈については
http://d.hatena.ne.jp/swan_slab/20040428#1083161665』(2005/03/25 22:48)
 
chisya 『もう愛国心もたないではやってらんないです。4月1日かと思いましたもん××

あの、教えていただきたいのですけれど…
『賠償責任については「行政庁全体が負うもので個人では負わない」とする最高裁判例が確立しており、この判例と対比すると、官僚は民事上の責任は負わないが、よりハードルが高いはずの刑事責任を負わされることになる。被告側は上告審で、この「矛盾」を突く方針を固めており、最高裁の判断が注目される。』
て記事があったのですけど、どう考えたらいいんでしょうか。ちょっとわからないです。』(2005/03/25 23:25)
 
swan_slab 『国家賠償法を含めた賠償責任と刑事責任は根本的に考え方が違うんんです。
前者は正義公平の見地から損害の填補の義務を誰に負わせるのが適切かという問題を徹底的に追及し、”非難”はしないということになっています。したがって、さまざまな因果関係、過失は損害の範囲を確定するために検証されます。
他方、刑事責任は徹底的に非難可能性を追及します。非難される当事者が公平の見地から行政庁全体に摩り替えられることは考えられないですよね。


したがって、両者は別々の問題を追及しているのであり「よりハードルが高い」かどうかの主観的な感想とは無縁のものといえると思います。』(2005/03/25 23:41)
 
swan_slab 『この問題で気になったのは、厚生労働省の管轄する事務において、例えば、国交省のような航空事故調査委員会設置法のような枠組がどうしてできないのかということです。もしかするとあるのかもしれませんが、ご存知ですか。』(2005/03/25 23:45)
 
chisya 『お返事ありがとうございます。

>調査委員会
んと、医療関連死については検証のための第三者機関が2005年度から設置されるはずです。再発防止のためのモデル事業だそうですけど、ほかには知らないです。原因究明と責任追及は分けないと、なにがあったのか明らかにできない、ですよね…
個人の刑事責任が問われる過失を許すというのは、やっぱり行政組織のありかたとしておかしい。特殊なパートではあるでしょうけれども、関連課がどこも機能しないのはおかしいです。』(2005/03/26 01:12)
 
swan_slab 『刑事責任(過失責任)が許されやすいのは別の理由があるんですよね。
ちょっと込み入った話になるのでまたあとで。』(2005/03/26 09:30)

 
 
 

*1:当時の医療現場の実態解明と問題点の検証を主な目的として社会学法律学の専門家が調査を担当しています。「疾病に関する基本的な知識の欠如からくる誤りも少なくない」「本来の趣旨に反して既成の構図をなぞっているに過ぎない」との批判もあるようです。

*2:大阪HIV訴訟原告団代表、厚労省 薬事・食品衛生審議会血液事業部会委員

*3:感染被害を経験した各国の検証のなかでは、米国医学研究所が95年にまとめた『HIVと血液供給 ISBN:4535981418』がよく知られています。これは、米国厚生省の要請にもとづき、輸血医学、疫学、公衆衛生、法律学倫理学などの専門家からなる委員会が、国の機関や血液バンクの関係者、医師、患者らに面接した調査結果の報告書です。読んでませんです。

*4:安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律

*5:この癒着構造の指摘により一気に社会問題化し、裁判を進めるうえで大きなメリットとなった反面、先進医療が内在する危険性を検証する視点がおろそかになったことは否定できない(大阪HIV訴訟弁護団弁護士 徳永信一さん)

*6:アメリカではメーカーとFDAの厳重な安全管理システムにもとづき、患者、医師、薬剤師に安全教育(STEPS)を行ったうえでサリドマイドが処方されています。日本には、2001年度15万錠、2002年度44万錠、2003年度に53万錠がおもに医師により個人輸入されていますが、個人輸入では薬事法の対象外となり副作用の報告義務もありません。輸入元のブラジルでは近年、新たな被害が報告されているそうです。厚労省の調査(2003年)で、のみ残しが未回収になっているケースもあるなどが明らかになり、昨年12月にガイドラインを公表(未承認薬をガイドラインで規制するのは初めてのことです)今年1月にはオーファンドラッグに指定されました。STEPSのような厳しいバースコントロールについても考えるところはありますけれども、日本の対応は、私には遅いように思えてなりません。([解説]サリドマイド希少疾病用医薬品に指定 読売新聞 2005.1.28)