HIV

 

HIV感染・患者の1000件台突入と懸念される性感染症の増加(BP 2005.2.14)
 
1月26日に発表されたエイズ動向委員会による年間報告(速報)によると、2004年の1年間に新たに報告されたHIV感染者・エイズ患者は合計で1114件となり、初めて1000件台に突入した(関連トピックス)。それも、じわじわ右肩上がりで増えてきた上での1000件突破だった点に注目すべきだ。これは、日本でのHIV感染のコントロールが必ずしもうまくいっていない証左となる。
対策は急を要する。性感染症の患者数が増加傾向にあり、HIV感染の土壌が広がりを見せているからだ。
性感染症(STD)サーベイランスによると、STD患者報告総数は1993年にはおよそ3万3000件に落ち着いていた。しかし、その後1995年まで減少傾向は続いたが、1996〜1997年は再び増加傾向に転じているのだ。
また、たとえば性器クラミジア感染症では、男性の24歳以下で漸次増加傾向にある。患者年齢のピークは1996年までは25〜29歳であったが、1997年には20〜24歳に移行している。一方、女性では39歳以下で1995年にわずかに減少していたが、1996年からは再び増加傾向にある。患者年齢のピークは20〜24歳で、この年齢層以下では男性患者発生数を上回っていた。
性感染症の増加だけでなく、その患者年齢のピークが低年齢化しているのも気がかりだ。若い世代を中心に、性感染症、特にHIV感染に対する関心が薄れていないか、今一度見直してみなければなるまい。(え)

新規HIV感染者、1−3月で207件、昨年同時期の150件より大幅増(日経BP 2005.4.26)
 
懸念されるのは、献血時の陽性率もまた増加している点だ。1−3月の献血件数は速報値で、131万191件(前年同時期137万4281件)だった。そのうちHIV抗体・核酸増幅検査陽性件数は24件で、10万人当たりの陽性者は1.832件(前年同時期1.019)と高率だった。感度の高い核酸増幅検査が導入された1999年10月以降、第1四半期でこのような高い陽性率だったのは初めてという。報告ではこの点を重視、「日本国内でHIV感染が広がりつつあることを示唆している」との委員長コメントを添えている。

先進国の中で、HIV感染件数がいまだに右肩上がりに増えているのは日本ぐらいのもの。日本発のHIV感染大流行を阻止するためにも、総合的な施策の実行が焦眉の急だ。(三和護、医療局編集委員

多剤耐性で病気の進行が早いHIV-1の出現、日本でも起こりうる?(日経BP 2005.3.25)
 
 

日本の小児HIV感染者・AIDS患者にも、直面する緊急課題がある(日経 2005.1.14)
 
わが国には残念ながら、HIV感染児あるいは小児AIDS患者の全数調査などの制度がないことから、その正確な動向を把握するには困難が伴う。そのため、HIV母子感染児らが成長過程で直面する社会的な課題については、患者個人やその家族、あるいは医療関係者らに、解決を委ねてしまっているのが現状だ。早急に、対策の軸を個々の点から線へ、線から面へ拡げていく努力が欠かせないが、その第一歩となる調査研究が昨年12月に開催された日本エイズ学会で報告された。大阪市総合医療センター小児科の外山正生氏が35例の感染児について、彼らが直面する緊急課題を発表した。
外山氏らは、厚生労働省の研究班の活動の一環として5年間にわたって小児科診療施設の全国調査を実施、35例のHIV感染児について現状を把握した。 
それによると、35例の転帰は、無症状ないしは中等度免疫低下が15例、帰国または不明が4例、AIDSが7例、死亡が9例だった。ちなみに初診時年齢の分布は、0歳が16例、1歳4例、2歳7例、4歳1例、5歳3例、6歳1例、7歳2例、11歳1例だった。
AIDSあるいは死亡となった割合は、初診年齢が2歳以下の場合、その後の治療内容に関わらず56%と高率だった。一方、5歳以上の場合は0%だった。また初診の年代でみると、AIDSあるいは死亡となった割合は1999年以前では56%、2000年以降は20%と、多剤併用療法(HAART)の普及の前後で大きな開きがあった。