第三者機関

 
水俣病問題に係る懇談会、提言書起草委員会。
約40ヶ所の削除・修正を求められていた草案について、委員会は譲歩を決めたようです。

水俣病懇談会 認定基準廃止見送り 委員側が譲歩の草案(熊日 2006.8.18)
 
七月までの段階では、補償・救済の仕組みを改革する方向性として、新たな医学的診断指針と症状に応じた補償・救済制度の創設を提言。現行の認定基準については、廃止して新たな診断指針の中に組み込むとしていた。
これに対し、環境省は「現行基準の廃止」という表現に強く抵抗。全面削除を求めていた。
修正した草案は、現行基準について、関西訴訟最高裁判決と同様に、原因企業チッソと補償協定を結ぶ劇症・重症患者を認定する基準としては容認。その基準に漏れるものの、補償を必要とする被害者を救う新たな基準を設定し、全体として水俣病被害者の新たな補償・救済の枠組みを構築するよう提言する方向で検討している。

立法での福祉施策を 懇談会委員ら提言盛り込みで一致(熊日 2006.8.25)
 
現在、四十代後半から五十代の胎児性患者は両親の高齢化が進み、将来的な介護が不安視されている。このため委員らは、永続的な福祉施策が不可欠と判断。胎児性患者以外も含め立法措置での対応を促すことで一致した。
認定基準については、劇症・重症患者を線引きするものとして現行基準は残すものの、補償を必要とする被害者を救う新たな基準を設置。全体として水俣病被害者の新たな補償・救済の枠組みを構築するよう求める。

 
9月に公表が予定されている提言は環境省からのものになってしまいますね。それならなんのための第三者機関なのか、最高裁判決を受けて設けられた懇談会でしたのに。

核心評論 同じ轍踏む環境省 調整名目で“干渉”(熊日 2006.8.19)
 
行政が第三者機関を自らの都合に合わせて誘導し、その結果、チッソの廃水は流され続け、被害拡大を招いた。この事実は、環境庁が九九年十二月にまとめた「水俣病に関する社会科学的研究会」報告書にも明記している。それなのに公式確認五十年を機につくられた第三者機関で、同じ轍を踏んでいる。

このような批判を受けることくらい最初からわかってたでしょう、そんなに現行の基準は守らなければならないですか。被害者の立場に立った提言に依ることなしに「切り捨てのための施策でしかない」との非難を免れることはできないのではありませんか。
患者のくるしみに背を向け続けてきて、そもそも加害者に公平な被害者救済ができるのか、という声さえあるなかでは不信のまなざしばかり向けられるのは、これまでを思えばしかたのないことでしょう。だからこそ第三者機関を設けたのではないですか??
できるかぎり広く受け入れられたいなら(そうでなければならないはずです)第三者機関の提言を、その中立性(たとえ限界があるとしても)を、必要としているのは国や県のほうでしょう。解決策を出したいなら、ですよ。わざわざぶち壊すのは、どーでもいいですよってことですか??
このようなやり方でも信頼が得られると考えているのであれば傲慢というしかないと思いますし、施策に対しての信頼など必要ないというなら行政にあるまじき姿勢ではないでしょうか。
この記事は

この懇談会の経緯がただ一つ意味があるとすれば、過去の失敗を生み出すに至った行政の論理、体質をいみじくもあぶり出している点だ。

というけれども、ただ失望が重なるだけだもの。
「なにも変わっていない、学んでいない」の批判に答えることができますか??
これもそう…

審査棄却理由の中に「人格」申請者に県謝罪(熊日 2006.8.15)
 
報告書は水俣病の症状の視野狭窄の確定法に関する質問に、「視野は、検査方法や被験者の環境、人格等機能的要因によって影響を受けやすい」などと回答。緒方さんが八月一日に「私の人権を傷つける表現」として、県に具体的な意味の説明を求める文書を送っていた。
県の謝罪文書は谷崎淳一・水俣病対策課長名。「環境、人格等機能的要因」について、「(申請者が)検診を受けるときの外的状況や疲労の具合、また不安感や緊張といった要因およびその影響の受けやすさを表現した」と説明。「表現が適切なものであるのか否かを何ら考察することなしに使用した。緒方さんと周囲の方々の心を痛めてしまい申し訳ない。今後使用は一切しない」としている。
緒方さんは「水俣病被害者に対する差別的な感情が表れているのではないか」と反発。近く県側に面会を求め、詳しい経緯と対応策をただす考え。代理人の高倉史朗・水俣病患者連合事務局長(55)は「極めて不用意、無礼な表現だ。症状を偽っていると疑っているようなもので、認定業務を担う県が被害者にどう向き合っているのか、如実に示している」と指摘している。

「人格」表記、県が直接謝罪「教訓生かすのが大事」(熊日 2006.8.20)
 
緒方さんは、県が測定した二歳時の毛髪水銀値が二二六ppm(正常値一〜五ppm)と高い数値だった。しかし、これまで四回の水俣病認定申請はすべて棄却され、いずれも行政不服審査を申し立てている。その理由を緒方さんは「水俣病で苦しんできた人生そのものを否定されたと感じたから」と語る。
緒方さんの行政不服審査の過程では、県の人権感覚が疑われる事例が相次ぎ表面化した。申請者の家族の職業を、県が無職の意味で「ブラブラ」と表記。認定審査の際に、県が本人の同意なく小中学校時代の成績証明書を添付していたことも明らかになった。県はその都度、緒方さんらに謝罪してきた。
それにもかかわらず、今回の「人格」表記。「この間、水俣病に対する行政の姿勢が変わってくれることを望んできたが、被害者を傷つけるばかりだった。これが(行政に与える)最後のチャンスだ」。緒方さんは、県が自ら再発防止策を検討するよう促している。

ひとを切る理由ならいっぱいあります。
「地域が混乱する」とか「政治決着の重み」とか「支払能力がない」とか。
とくに、苦痛の訴えに対して、そんなはずはないとするときに、感受性に差がある、というのは便利な言葉ですね。いまになっても、差別である悪意がある、と言えば、それもまた主観的で、感受性の問題とされかねないのでしょうけれど、でもこの便利な言葉を使ってもいいだけのことを、水俣病患者に、だれもしてきてはいません。
昨年10月3日の第一陣から8月12日の追加提訴まで、司法での救済を求めるひとは1124人になりました。なのに現行の基準は絶対に正しくて、見直すべきは、あるいは疑うべきは患者の訴えだというのには無理があるとしか見えません。これだけのひとの認定申請についても、棄却理由を「環境、人格等機能的要因」とするなら、「現行基準の廃止という表現に強く抵抗」してみたところでそこに正当性はないと私は思います。棄却しようにも認定審査会は停止したままですけれども。

不知火患者会 第6陣100人追加提訴 8億5000万円賠償求め(熊日 2006.8.12)
 
同地裁前で開かれた提訴前集会で、原告代表の大木シヤ子さん(63)=芦北町=が「正当な患者として救済してほしい」と決意表明。提訴後、同会は「第二の政治決着は、補償金額を安く抑えようとするものにすぎない。司法救済制度による解決を求めて闘っていく」などとする声明を発表した。

不知火患者会など懇談会委員に要望書送付(熊日 2006.8.12)
 
要望書は「環境省が自らに都合の悪い提言は出させないということならば、事態は混迷する」とした上で、「中途半端な解決策ではこれまでの場当たり的な解決の延長に過ぎず、思い切った発想の転換が必要」と指摘している。
園田昭人弁護団長は「第三者機関に判断を求めておきながら、自分に都合のよい結論に従わせようとする行政の体質こそ、水俣病問題の失敗の本質。環境省が懇談会の提言に手を加えるのは許されない」としている。

水俣病:与党解決策を改めて否定−−国賠訴訟で弁護団長/熊本(毎日新聞 2006.7.15)
 
原告弁護団長は意見陳述で、与党プロジェクトチームが検討している新たな政治解決策について「行政の責任が前提にない上、水俣病とも認めない。補償内容も不十分」と話し、「司法救済制度の確立以外、全面解決の方法はない」と強調した。患者会は、各原告が水俣病であることを立証するため、検診の方法や診断基準を統一して作成した「共通診断書」の第1陣50人分なども提出した。